不動産登記法

公示・申請・効力で整理

1本章の学習ポイント

不動産登記法は、土地や建物の現況と権利関係を登記記録によって公に示すための法律です。宅建試験では、登記手続の細かな実務よりも、「どこに何が記録されるのか」「申請義務があるのか」「どのような効力が生じるのか」を区別することが大切です。

学習の全体像

この章では、不動産登記法の基本から、登記記録の構造、表示登記と権利登記、申請義務、対抗力と公信力、証明書の請求、共同申請と単独申請、仮登記、申請情報・添付情報、合筆・職権登記までを順に整理します。

試験対策

試験では、表題部・甲区・乙区の記録内容、表示登記1か月・相続登記3年・氏名や住所等の変更登記2年という期限、対抗力はあるが公信力はないこと、共同申請の原則と単独申請の例外、登記識別情報の12桁、合筆できない土地が狙われます。数字と原則・例外をセットで確認しましょう。

この章の見方
【この章の見方】

まず「表示と権利」を分け、次に「申請義務・申請方法・効力」の3点から整理します。

2不動産登記法の基本

不動産登記法は、土地や建物の現況と権利関係を登記記録に記録し、誰でも確認できるようにするための法律です。登記記録を見ることで、対象となる不動産の内容と、その不動産について誰がどのような権利を持っているのかを確認できます。

登記によって公示される内容は、大きく2つに分かれます。1つは、土地の所在・地番・地目・地積や、建物の種類・構造・床面積などの物理的状況です。もう1つは、所有権・抵当権・地上権・賃借権などの権利関係です。

物理的状況と権利関係を分けて記録することで、不動産の内容を特定し、取引の安全を図ります。まずこの2つを区別することが、不動産登記法を理解する入口です。

不動産登記法が公示する内容
表示 物理的状況を公示 所在・地番・地目・床面積など 権利 権利関係を公示 所有権・抵当権など 目的 取引の安全 登記記録で確認できるようにする 物理的状況と権利関係を分ける 表示登記と権利登記の入口
【要点整理】
項目確認ポイント
物理的状況土地の所在・地番・地目・地積、建物の種類・構造・床面積など
権利関係所有権、抵当権、地上権、賃借権、先取特権など
制度の目的不動産の内容と権利関係を登記記録で確認できるようにし、取引の安全を図る

3登記記録の構造

登記記録は、1筆の土地または1個の建物ごとに作成されます。基本構造は、表題部と権利部です。まず表題部で不動産を特定し、その後、権利部の甲区と乙区で権利関係を確認します。

表題部には、不動産の物理的状況が記録されます。土地では所在・地番・地目・地積、建物では所在・家屋番号・種類・構造・床面積などが記録されます。

権利部は甲区と乙区に分かれます。甲区には所有権に関する事項、乙区には所有権以外の権利に関する事項が記録されます。登記記録を読むときは、「表題部で不動産を特定し、甲区で所有権、乙区でその他の権利を見る」という順序を意識しましょう。

登記記録の構造
表題部 物理的状況 土地・建物の現況 権利部 権利関係 甲区と乙区に分かれる 甲区 所有権に関する事項 保存・移転・差押えなど 乙区 所有権以外の権利 抵当権・地上権・賃借権など 表題部・甲区・乙区を区別
【要点整理】
区分記録される主な内容
表題部土地の所在・地番・地目・地積、建物の所在・家屋番号・種類・構造・床面積など
甲区所有権保存登記、所有権移転登記、差押え、仮処分など、所有権に関する事項
乙区抵当権、地上権、賃借権、先取特権など、所有権以外の権利に関する事項
確認の順序表題部で不動産を特定し、甲区で所有権、乙区で所有権以外の権利を確認
重要ポイント
【重要ポイント】

表題部は物理的状況、甲区は所有権、乙区は所有権以外の権利です。

4表示登記と権利登記

表示登記は、表題部に不動産の物理的状況を記録する登記です。建物を新築した場合の表題登記や、建物がなくなった場合の滅失登記などが代表例です。表示登記には、原則として申請義務があります。

権利登記は、権利部に所有権や抵当権などの権利関係を記録する登記です。所有権保存登記、所有権移転登記、抵当権設定登記などが代表例です。権利登記は原則として任意ですが、登記を備えることで第三者に権利を主張できる対抗力があります。

ただし、権利登記がすべて任意というわけではありません。相続登記と、登記名義人の氏名・住所等変更登記は義務化されています。原則と例外を分けて覚えましょう。

表示登記と権利登記の違い
表示登記 表題部に記録 物理的現況を公示 義務 原則申請義務あり 新築・滅失など1か月 権利登記 権利部に記録 権利関係を公示 効力 原則任意・対抗力あり 相続・住所変更は義務化 権利登記にも義務化の例外あり
【要点整理】
項目確認ポイント
表示登記表題部に記録し、不動産の物理的状況を公示する。原則として申請義務あり
権利登記権利部に記録し、所有権・抵当権などを公示する。原則任意だが対抗力あり
義務化された権利登記相続登記と、登記名義人の氏名・住所等変更登記
効力の違い表示登記には原則として対抗力がなく、権利登記には第三者への対抗力がある
注意ポイント
【注意ポイント】

権利登記は原則任意ですが、相続登記と氏名・住所等変更登記には申請義務があります。

5申請義務

申請義務は、期限の数字と起算点を分けて整理します。建物の表題登記や土地・建物の滅失登記などの表示登記は、原則として1か月以内に申請します。

相続登記は、相続によって不動産の所有権を取得したことを知った日から3年以内に申請します。遺産分割によって不動産を取得した場合も、遺産分割が成立した日から3年以内に申請します。すぐに相続登記を申請することが難しい場合には、相続人申告登記によって申請義務を簡易に履行する方法があります。

登記名義人の氏名・住所・名称などに変更があった場合は、変更があった日から2年以内に変更登記を申請します。この義務は令和8年4月1日から始まり、義務化前に変更があった場合も対象となります。

正当な理由なく申請を怠ると、相続登記は10万円以下、氏名・住所等変更登記は5万円以下の過料の対象になります。期限だけでなく、起算点と過料まで一緒に押さえましょう。

申請義務の期限
表示 表題・滅失は1か月 新築・滅失など 相続 知った日から3年 遺産分割成立後も3年 変更 住所等変更は2年 令和8年4月1日から義務化 過料 相続10万円・変更5万円 正当な理由なく怠った場合 1か月・3年・2年を区別
【要点整理】
登記期限・確認ポイント
表題登記建物の新築などでは、原則として所有権を取得した日から1か月以内
滅失登記土地・建物が滅失した場合は、原則として滅失の日から1か月以内
相続登記相続による所有権取得を知った日から3年以内。遺産分割成立後も成立日から3年以内
氏名・住所等変更登記氏名・住所・名称などに変更があった日から2年以内
義務化前の変更令和8年4月1日前の変更も対象。原則として令和10年3月末までに登記
相続人申告登記相続登記をすぐに申請できない場合に、申請義務を簡易に履行する制度
過料正当な理由なく怠ると、相続登記は10万円以下、住所等変更登記は5万円以下
重要ポイント
【重要ポイント】

表示登記は1か月、相続登記は3年、氏名・住所等変更登記は2年です。

6対抗力と公信力

所有権移転などの権利登記を備えると、その権利取得を第三者に主張できます。この効力を対抗力といいます。

一方、日本の不動産登記には公信力がありません。公信力とは、登記の内容を信じて取引した人を当然に保護する効力です。

したがって、不動産登記には第三者に対抗する力はありますが、登記名義人を真の権利者だと信じただけで、必ず権利を取得できるわけではありません。「対抗力あり・公信力なし」を1つの組合せとして覚えましょう。

対抗力 第三者に主張できる力 登記を備えて対抗 公信力 信じた人を当然に保護 日本の不動産登記にはない 結論 対抗力あり・公信力なし 典型的なひっかけ 登記を信じただけでは保護されない 真の権利者からの取得かを確認
【要点整理】
項目意味
対抗力登記を備えることにより、権利取得を第三者に主張できる効力
公信力登記内容を信じた人を当然に保護する効力。日本の不動産登記にはない
試験上の注意登記を信じたから当然に保護される、という結論にはならない
注意ポイント
【注意ポイント】

登記には対抗力がありますが、公信力はありません。登記を信じただけでは足りません。

7登記事項証明書と申請方法

登記事項証明書は、登記記録の全部または一部を証明する書面です。誰でも請求でき、利害関係があることを証明する必要はありません。

登記事項要約書は、登記記録の概要を確認するための資料です。登記官の認証文がないため、登記事項証明書のような証明力はありません。証明書と要約書の違いを区別しておきましょう。

登記申請は、オンライン、書面、郵送で行うことができ、登記所へ出頭することは必須ではありません。代理人に申請を委任することもできます。また、登記申請手続では、本人が死亡しても委任による代理権が消滅しないという特則があります。

証明書の請求と登記申請
証明書 誰でも請求できる 利害関係の説明不要 要約書 概要を確認する資料 認証文なし 申請方法 オンライン・書面・郵送 出頭は必須ではない 代理 代理人に委任可能 本人死亡後も代理権の特則 請求と申請は別の手続
【要点整理】
項目確認ポイント
登記事項証明書登記記録の全部または一部を証明する書面。誰でも請求でき、利害関係の証明は不要
登記事項要約書登記記録の概要を確認する資料。認証文がなく、証明書と同じ証明力はない
申請方法オンライン申請、書面申請、郵送申請が可能。登記所への出頭は必須ではない
代理申請代理人へ委任できる。登記申請手続では本人死亡後も代理権が消滅しない特則あり
整理のポイント
【整理のポイント】

証明書の請求は登記記録を確認する手続、登記申請は登記記録の内容を変更する手続です。

8共同申請と単独申請

権利に関する登記は、原則として登記権利者と登記義務者が共同して申請します。登記によって利益を受ける人が登記権利者、不利益を受ける人が登記義務者です。

売買による所有権移転登記では、買主が登記権利者、売主が登記義務者です。抵当権設定登記では、抵当権者が登記権利者、抵当権を設定する人が登記義務者になります。

これに対し、表示に関する登記は原則として単独申請です。また、権利登記でも、所有権保存登記、相続・合併による登記、登記手続を命じる確定判決による登記、氏名・住所等変更登記などは単独申請できます。

所有権保存登記は、最初に行う所有権の登記です。申請できる人は、表題部所有者やその相続人などに限られます。また、相続人に対する遺贈による所有権移転登記は単独申請できますが、相続人以外への遺贈は原則として共同申請です。

判決による単独申請では、単に権利の存在を確認する判決ではなく、登記手続を命じる確定判決であることが必要です。

共同申請と単独申請
原則 権利者・義務者の共同申請 権利登記の基本 権利者 登記で利益を受ける人 買主・抵当権者など 義務者 登記で不利益を受ける人 売主・設定者など 例外 単独申請できる登記 保存・相続・判決など 売買は買主が権利者、売主が義務者
【要点整理】
項目確認ポイント
共同申請の原則権利に関する登記は、原則として登記権利者と登記義務者が共同申請
登記権利者登記によって利益を受ける人。売買では買主、抵当権設定では抵当権者
登記義務者登記によって不利益を受ける人。売買では売主、抵当権設定では設定者
単独申請の例所有権保存、相続・合併、登記手続を命じる確定判決、氏名・住所等変更など
表示登記表示に関する登記は、原則として単独申請
遺贈による登記相続人への遺贈は単独申請。相続人以外への遺贈は原則共同申請
注意ポイント
【注意ポイント】

判決なら何でも単独申請できるわけではありません。登記手続を命じる確定判決が必要です。

9仮登記

仮登記は、将来の本登記に備えて順位を保全するための登記です。売買予約など、すぐに本登記をすることができない場合に、後の本登記の順位を守るために利用されます。

仮登記には順位保全効があります。後に仮登記に基づく本登記をすると、その順位は仮登記の順位によります。ただし、仮登記をしただけでは、第三者に対する対抗力は完成しません。対抗力を得るためには本登記が必要です。

本登記によって不利益を受ける利害関係人がいる場合には、その承諾などが必要になります。また、仮登記義務者の承諾があるとき、または仮登記を命じる処分があるときは、登記権利者が単独で仮登記を申請できます。

仮登記の整理
仮登記 順位を保全 本登記に備える登記 効力 順位保全効 対抗力は完成しない 本登記 対抗力を得る 条件・手続が整った後 利害関係 承諾等を確認 本登記で不利益を受ける人 仮登記だけでは対抗力は完成しない
【要点整理】
項目確認ポイント
仮登記本登記に備えて順位を保全する登記
順位保全効後に本登記をしたとき、順位は仮登記の順位による
対抗力仮登記だけでは対抗力は完成せず、本登記が必要
本登記の注意本登記で不利益を受ける利害関係人がいるときは、承諾などを確認
仮登記の単独申請仮登記義務者の承諾または仮登記を命じる処分があれば、登記権利者が単独申請できる
重要ポイント
【重要ポイント】

仮登記は順位を保全する登記です。第三者への対抗力は、本登記をして初めて完成します。

10申請情報・添付情報

申請情報は、登記の目的、登記原因、当事者、不動産の表示など、登記申請の本体となる情報です。

登記原因証明情報は、売買・相続・抵当権設定など、登記の原因となった法律関係を証明する情報です。申請情報が「何を登記するか」を示すのに対し、添付情報は、その申請の原因や本人性などを裏付けます。

登記識別情報は、登記名義人本人であることを確認するための12桁の英数字です。従来の権利証に相当する情報で、登記義務者側の本人確認に用いられることが多い点を押さえます。

登記申請は、原則として登記の目的・登記原因ごとに、1つの不動産ごとに行います。ただし、同じ登記所の管轄内で、登記の目的・原因・原因日付が同じ場合などには、複数の不動産をまとめて申請できることがあります。

申請情報と添付情報
申請情報 登記目的・原因・当事者 申請の本体 原因証明 登記原因を証明 売買契約・相続関係など 識別情報 登記名義人本人性を確認 義務者の情報として確認 住所証明 所有権取得者等を確認 氏名・住所のつながり 申請情報と添付情報を分ける
【要点整理】
情報確認ポイント
申請情報登記の目的、登記原因、当事者、不動産の表示など、申請の本体となる情報
登記原因証明情報売買・相続・抵当権設定など、登記原因を証明する情報
登記識別情報登記名義人本人であることを確認する12桁の英数字。従来の権利証に相当
住所証明情報所有権を取得する人などの住所を確認する情報
印鑑証明情報登記義務者の意思確認が重視される場合に必要となる情報
申請単位原則として、登記の目的・登記原因ごとに、1つの不動産ごとに申請
一括申請同一管轄で登記の目的・原因・原因日付が同じ場合などに認められることがある

11合筆・職権登記

合筆は、複数の土地を1筆の土地にまとめる登記です。分筆は、1筆の土地を複数の土地に分ける登記です。分筆・合筆には原則として申請義務はなく、登記によって効力が生じます。

合筆はいつでもできるわけではありません。互いに接していない土地、地目が異なる土地、地番区域が異なる土地、所有者や持分が異なる土地は、原則として合筆できません。

また、所有権以外の権利に関する登記がある土地も、原則として合筆できません。ただし例外もあるため、問題文に示された権利の内容を確認します。

不動産登記には、申請によらず登記官が職権で行う登記もあります。職権登記は、表示の是正など、登記官の関与が必要な場面で行われます。

合筆・職権登記
合筆 複数の土地を1筆にする 制限事由を確認 制限 地目・地番区域・所有者 異なると原則不可 権利 所有権以外の登記 抵当権などがあると原則不可 職権 登記官が行う登記 表示の是正などで確認 合筆はできない場合を覚える
【要点整理】
項目確認ポイント
合筆複数の土地を1筆の土地にまとめる登記。原則として申請義務はなく、登記により効力が生じる
分筆1筆の土地を複数の土地に分ける登記
合筆できない例接していない、地目・地番区域が異なる、所有者・持分が異なる土地など
権利登記がある土地所有権以外の権利に関する登記がある土地は原則として合筆できない
職権登記申請によらず登記官が職権で行う登記。表示の是正などで確認
注意ポイント
【注意ポイント】

合筆では、土地の接続、地目、地番区域、所有者・持分、権利の登記を順に確認します。

【要点整理】
項目 確認ポイント
記録場所 表題部は物理的状況、甲区は所有権、乙区は所有権以外の権利
申請義務 表示登記は1か月、相続登記は3年、氏名・住所等変更登記は2年
効力 権利登記には対抗力あり、表示登記には原則として対抗力なし。不動産登記に公信力なし
申請方法 権利登記は共同申請が原則。所有権保存・相続・判決などは単独申請の例外
特殊な登記 仮登記は順位保全、合筆は制限事由、職権登記は登記官の関与を確認
申請情報 登記識別情報は12桁の英数字。申請は原則1不動産ごとだが、一括申請できる場合あり

最後に押さえるポイント

  • 不動産登記法は、不動産の物理的状況と権利関係を公示する制度です。
  • 表題部は物理的状況、甲区は所有権、乙区は所有権以外の権利を記録します。
  • 表示登記は表題部に記録され、原則として申請義務があります。
  • 権利登記は権利部に記録され、原則任意ですが、第三者への対抗力があります。
  • 相続登記と氏名・住所等変更登記は、権利登記でも申請義務があります。
  • 表題登記・滅失登記は原則1か月以内、相続登記は3年以内、氏名・住所等変更登記は2年以内です。
  • 相続登記をすぐに申請できない場合は、相続人申告登記で申請義務を簡易に履行できます。
  • 不動産登記には対抗力がありますが、公信力はありません。
  • 登記事項証明書は誰でも請求でき、利害関係の証明は不要です。
  • 登記申請はオンライン・書面・郵送で行うことができ、登記所への出頭は必須ではありません。
  • 権利登記は、原則として登記権利者と登記義務者の共同申請です。
  • 所有権保存、相続・合併、登記手続を命じる確定判決などは単独申請できます。
  • 相続人への遺贈は単独申請ですが、相続人以外への遺贈は原則として共同申請です。
  • 仮登記には順位保全効がありますが、仮登記だけでは対抗力は完成しません。
  • 申請情報は登記申請の本体、添付情報は登記原因や本人性などを裏付ける情報です。
  • 登記識別情報は、登記名義人本人であることを確認する12桁の英数字です。
  • 登記申請は原則として1つの不動産ごとに行いますが、一括申請できる場合もあります。
  • 合筆では、土地の接続、地目、地番区域、所有者・持分、所有権以外の権利の登記を確認します。
  • 職権登記は、申請によらず登記官が行う登記です。