期間・更新・対抗要件で整理
1本章の学習ポイント
借地借家法は、土地や建物を借りる人を、民法の賃貸借よりも強く保護するための特別法です。最初に、建物を所有する目的で土地を借りる「借地」なのか、建物そのものを借りる「借家」なのかを区別しましょう。
学習の全体像
この章では、借地借家法が適用される範囲、普通借地権、借地権の対抗要件と権利処理、定期借地権等、普通借家、定期建物賃貸借、借家に関する周辺論点を順に確認します。普通型では「更新」と「正当事由」、定期型では「契約方式」「期間」「事前説明・終了通知」を分けて整理します。
試験対策
試験では、普通借地権の30年・20年・10年、借地上建物の登記名義、事業用定期借地権の契約方式、普通借家の対抗要件、定期建物賃貸借の事前説明と終了通知がよく問われます。借主に不利な特約は原則として無効ですが、造作買取請求権を排除する特約など、有効な例外もあります。
【この章の見方】
「借地か借家か」「普通型か定期型か」を最初に確認し、その後に期間・更新・対抗要件・終了方法を当てはめます。
2借地借家法の適用範囲
借地借家法は、土地や建物のすべての貸し借りに適用されるわけではありません。借地として保護されるのは、建物を所有する目的で設定された地上権または土地賃借権です。
そのため、駐車場や資材置場として土地を借りる場合は、原則として借地借家法上の借地権には当たりません。また、無償の使用貸借や、一時使用の目的であることが明らかな借地も、借地借家法による強い保護の対象から外れます。
借家は、建物を有償で借りる建物賃貸借です。一時使用の目的が明らかな建物賃貸借や、無償で借りる使用貸借には、借地借家法の強い借主保護は及びません。
借地借家法では、借主に不利な特約は原則として無効です。ただし、造作買取請求権を排除する特約など、法律上有効とされる例外もあります。
| 項目 | 確認ポイント |
|---|---|
| 借地に当たるもの | 建物所有を目的とする地上権または土地賃借権 |
| 借地に当たらないもの | 駐車場、資材置場、使用貸借、一時使用目的が明らかな借地 |
| 借家に当たるもの | 建物を有償で借りる建物賃貸借 |
| 借家の保護から外れるもの | 使用貸借、一時使用目的が明らかな建物賃貸借 |
| 借主に不利な特約 | 原則として無効。ただし、造作買取請求権の排除特約など有効な例外もある |
【注意ポイント】
土地を借りていても、建物を所有する目的がなければ、借地借家法上の借地権には当たりません。まず利用目的を確認します。
3普通借地権
普通借地権は、契約の更新を予定している借地権です。最初の存続期間は30年以上とされます。30年未満の期間を定めた場合や、期間を定めなかった場合は、存続期間を30年として扱います。
契約を更新した後の期間は、最初の更新が20年以上、2回目以降の更新が10年以上です。これより短い期間を定めても、借地権者に不利な部分は法定期間に修正されます。
更新には、当事者の合意による更新のほか、借地権者からの請求による更新、期間満了後の土地使用の継続による更新があります。請求による更新と使用継続による更新では、期間満了時に借地上に建物があることが必要です。
借地権設定者が更新を拒絶するには、遅滞なく異議を述べるだけでは足りず、正当事由も必要です。正当事由の有無は、土地を使用する必要性、契約の経過、土地の利用状況、立退料の申出などを総合して判断します。
借地上の建物が滅失した場合は、当初の存続期間中か、更新後かを分けて考えます。当初期間中に建物が滅失しても、借地権は当然には消滅しません。一方、更新後に建物が滅失し、借地権者が借地権設定者の承諾を得ずに再築した場合は、借地権設定者の解約申入れにより、一定期間後に借地権が終了することがあります。
| 項目 | 確認ポイント |
|---|---|
| 当初の存続期間 | 30年以上。30年未満の定めや期間の定めがない場合は30年として扱う |
| 最初の更新後 | 20年以上 |
| 2回目以降の更新後 | 10年以上 |
| 更新の方法 | 合意更新、請求による更新、使用継続による更新 |
| 建物の存在 | 請求による更新・使用継続による更新では、期間満了時に借地上の建物が必要 |
| 更新拒絶 | 借地権設定者には、遅滞ない異議に加えて正当事由が必要 |
| 当初期間中の滅失 | 建物が滅失しても、借地権は当然には消滅しない |
| 更新後の無断再築 | 借地権設定者の解約申入れにより、一定期間後に借地権が終了することがある |
【重要ポイント】
普通借地権の期間は、当初30年、最初の更新20年、2回目以降10年です。更新の回数によって数字を分けましょう。
4借地権の対抗要件と権利処理
借地では、土地の所有者が変わったときに、新しい所有者へ借地権を主張できるかが重要です。借地権そのものの登記がなくても、借地権者本人名義で借地上の建物が登記されていれば、第三者に借地権を対抗できます。
建物登記の名義は、借地権者本人でなければなりません。家族名義や、法人が借地権者であるのに代表者個人名義となっている建物登記では、対抗要件として足りません。
借地上の建物が滅失した場合でも、滅失前に建物登記があり、借地権者が必要事項を土地上に掲示すれば、原則として2年間は借地権の対抗力を維持できます。
借地契約が更新されずに終了するとき、借地権者は借地権設定者に対し、借地上の建物を時価で買い取るよう請求できます。借地権や借地上建物を譲渡・転貸する場合は、原則として借地権設定者の承諾が必要です。承諾を得られないときは、裁判所の許可が承諾に代わる場合があります。
| 項目 | 確認ポイント |
|---|---|
| 対抗要件 | 借地権の登記、または借地権者本人名義の借地上建物登記 |
| 登記名義 | 家族名義や法人代表者個人名義など、借地権者本人名義でない建物登記では足りない |
| 建物滅失後 | 滅失前に建物登記があり、必要事項を掲示すれば、原則として2年間対抗力を維持できる |
| 建物買取請求権 | 更新がなく借地契約が終了するとき、借地権者は建物を時価で買い取るよう請求できる |
| 譲渡・転貸 | 原則として借地権設定者の承諾が必要。承諾が得られないときは裁判所の許可を確認する |
| 建物譲受人 | 譲渡承諾を得られないときは、裁判所の許可や建物買取請求を確認する |
| 地代等増減請求 | 土地価格、公租公課、近傍類似地代などにより地代が不相当になったときに請求できる |
【注意ポイント】
借地上建物の登記は、登記があるかだけでなく、誰の名義かまで確認します。
5定期借地権等
定期借地権等は、普通借地権とは異なり、更新を予定しない借地権です。宅建試験では、一般定期借地権、事業用定期借地権、建物譲渡特約付借地権の3種類を比較して整理します。
一般定期借地権の存続期間は50年以上です。契約は、公正証書等の書面または電磁的記録によって行います。公正証書に限定されているわけではありません。
事業用定期借地権は、存続期間が10年以上50年未満で、事業用建物の所有を目的とします。契約は公正証書によって行う必要があります。試験では、「事業用・10年以上50年未満・公正証書のみ」を一組で覚えましょう。
建物譲渡特約付借地権は、存続期間が30年以上です。期間が経過した後、借地上の建物を地主へ譲渡する特約により、借地権を消滅させます。建物の譲渡後も借地権者や借家人が建物を使用し続ける場合は、期間の定めのない建物賃貸借として扱われます。
| 種類 | 確認ポイント |
|---|---|
| 一般定期借地権 | 50年以上。公正証書等の書面または電磁的記録で契約する。更新、再築による期間延長、建物買取請求はない |
| 事業用定期借地権 | 10年以上50年未満。事業用建物に限定され、契約方式は公正証書のみ |
| 建物譲渡特約付借地権 | 30年以上。期間経過後に建物を地主へ譲渡する特約により借地権が消滅する |
| 建物譲渡後の使用 | 借地権者や借家人が建物を使い続けるときは、期間の定めのない建物賃貸借として扱う |
【注意ポイント】
公正証書でなければならないのは事業用定期借地権です。一般定期借地権は、公正証書等の書面または電磁的記録で契約できます。
6普通借家
普通借家では、貸主側から契約を終了させることが制限され、借主が強く保護されます。期間を定める場合は1年以上とする必要があり、1年未満の期間を定めたときは、期間の定めがない建物賃貸借とみなされます。
建物賃借権は、建物の引渡しを受ければ、登記がなくても第三者に対抗できます。建物の所有者が変わった場合でも、賃借人が引渡しを受けていれば、新しい所有者に賃借権を主張できます。
貸主が契約の更新を拒絶したり、解約を申し入れたりするには、正当事由が必要です。期間満了による更新拒絶の通知は、期間満了の1年前から6か月前までの間に行います。
期間満了後も賃借人が建物を使用し続け、貸主が遅滞なく異議を述べないときも、契約は更新されます。法定更新後は、原則として期間の定めがない建物賃貸借になりますが、期間以外の条件は従前と同じです。
期間の定めがない普通借家では、貸主からの解約申入れは6か月後、借主からの解約申入れは民法の原則により3か月後に契約が終了します。
| 項目 | 確認ポイント |
|---|---|
| 存続期間 | 期間を定める場合は1年以上。1年未満の定めは、期間の定めがないものとみなされる |
| 対抗要件 | 建物の引渡し。登記がなくても第三者に対抗できる |
| 貸主側の終了 | 更新拒絶・解約申入れには正当事由が必要 |
| 更新拒絶の通知 | 期間満了の1年前から6か月前までに行う |
| 期間の定めなし | 貸主からの解約申入れは6か月後、借主からは3か月後に終了するのが基本 |
| 使用継続による更新 | 満了後も賃借人が使用を続け、貸主が遅滞なく異議を述べなければ更新される |
| 法定更新後 | 原則として期間の定めがない建物賃貸借となり、期間以外の条件は従前と同じ |
【注意ポイント】
普通借家で1年未満の期間を定めると、期間の定めがない扱いになります。定期建物賃貸借では1年未満でも有効です。
7定期建物賃貸借
定期建物賃貸借は、契約期間が満了すると、更新されずに終了する建物賃貸借です。普通借家よりも借主保護が弱くなるため、契約方式や事前説明について厳格な要件が定められています。
契約は、書面または電磁的記録によって行います。さらに賃貸人は、契約を結ぶ前に、更新がなく期間満了によって契約が終了することを、書面の交付または電磁的方法による提供をしたうえで説明しなければなりません。
契約書を作成しただけでは足りず、更新がないことを契約前に説明したかが別に問われます。事前説明をしなかった場合は、契約全体が無効になるのではなく、「更新がない」という定めが無効になります。
契約期間が1年以上の定期建物賃貸借では、賃貸人は期間満了の1年前から6か月前までに、契約が終了する旨を通知します。この通知を怠った場合、賃貸人は、通知をした日から6か月を経過するまで、契約の終了を賃借人に対抗できません。
定期建物賃貸借には更新はありませんが、期間満了後に当事者が改めて契約を結ぶ再契約はできます。また、居住用で床面積が200㎡未満の建物について、転勤・療養・親族の介護など、やむを得ない事情があるときは、賃借人から中途解約を申し入れることができ、申入れから1か月で契約が終了します。
| 項目 | 確認ポイント |
|---|---|
| 契約方式 | 書面または電磁的記録による契約が必要 |
| 事前説明 | 契約前に、更新がなく期間満了で終了することを説明する |
| 説明をしなかった場合 | 契約全体ではなく、更新がない旨の定めが無効になる |
| 期間 | 期間の制限はなく、1年未満でも有効 |
| 終了通知 | 期間1年以上なら、満了の1年前から6か月前までに通知する。怠ると通知後6か月を経過するまで終了を対抗できない |
| 中途解約 | 居住用200㎡未満で、転勤・療養・親族介護などやむを得ない事情があるとき、賃借人から申入れでき、1か月後に終了する |
| 再契約 | 更新はないが、当事者が改めて契約を結ぶことはできる |
| 借賃増減請求 | 借賃増減請求を排除する特約も有効 |
【注意ポイント】
事前説明がない場合に無効になるのは「更新がない旨の定め」です。契約全体が当然に無効になるわけではありません。
8借家の周辺論点
借家では、造作買取請求、借賃増減請求、賃借権の譲渡・転貸、取壊し予定建物の賃貸借も重要です。誰が誰に対して何を請求できるのかを、主語に注意して整理します。
造作買取請求権とは、賃借人が賃貸人の同意を得て建物に付加した造作について、契約終了時に賃貸人へ買い取りを請求できる権利です。ただし、この権利は特約によって排除できます。
建物の借賃が不相当になったときは、建物価格、公租公課、近傍同種建物の借賃などをもとに、借賃の増額または減額を請求できます。
賃借権の譲渡や転貸には、原則として賃貸人の承諾が必要です。ただし、無断譲渡・転貸であっても、賃貸人に対する背信的行為と認めるに足りない特段の事情がある場合は、契約を解除できないことがあります。
法令または契約によって取壊しが予定されている建物については、取壊し予定時までを期間とする建物賃貸借を結ぶことができます。この特約は、取壊しの事由を記載した書面または電磁的記録によって行います。
| 項目 | 確認ポイント |
|---|---|
| 造作買取請求 | 賃貸人の同意を得て付加した造作について、契約終了時に買い取りを請求できる。特約で排除できる |
| 借賃増減請求 | 建物価格、公租公課、近傍同種建物の借賃などにより不相当になったときに請求できる |
| 賃借権譲渡・転貸 | 原則として賃貸人の承諾が必要。背信的行為と認めるに足りない特段の事情があれば解除できないことがある |
| 取壊し予定建物 | 取壊し予定時までの賃貸借が可能。取壊しの事由を記載した書面または電磁的記録で特約する |
【例外の特約】
借主に不利な特約でも、造作買取請求権の排除や、取壊し予定建物の賃貸借など、有効となるものがあります。
9借地・借家の横断比較
借地借家法は、借地と借家を横断して比べると整理しやすくなります。借地の入口は「建物所有目的の土地利用」、借家の入口は「有償の建物賃貸借」です。
普通借地権は30年・20年・10年、定期借地権等は50年以上・10年以上50年未満・30年以上を押さえます。借地権を第三者に対抗するには、借地権の登記または借地権者本人名義の借地上建物登記が必要です。
普通借家は建物の引渡しで第三者に対抗でき、貸主側から契約を終了させるには正当事由が必要です。定期建物賃貸借では、書面または電磁的記録による契約、更新がない旨の事前説明、期間1年以上の場合の終了通知を確認します。
| 分類 | 確認ポイント |
|---|---|
| 借地の入口 | 建物所有目的の地上権または土地賃借権かを確認する |
| 普通借地権 | 当初30年、最初の更新20年、2回目以降10年。更新拒絶には正当事由が必要 |
| 借地の対抗要件 | 借地権の登記、または借地権者本人名義の借地上建物登記 |
| 定期借地権等 | 一般50年以上、事業用10年以上50年未満、建物譲渡特約付30年以上 |
| 借家の入口 | 有償の建物賃貸借かを確認する。使用貸借・一時使用目的は別に整理する |
| 普通借家 | 建物の引渡しで対抗できる。貸主側の終了には正当事由が必要 |
| 定期建物賃貸借 | 書面または電磁的記録、更新がない旨の事前説明、期間1年以上なら終了通知が必要 |
最後に押さえるポイント
- 借地借家法は、民法の賃貸借よりも借主を強く保護する特別法です。
- 借地権は、建物所有を目的とする地上権または土地賃借権です。
- 駐車場・資材置場・使用貸借・一時使用目的は、借地借家法の強い保護から外れます。
- 普通借地権の期間は、当初30年以上、最初の更新20年以上、2回目以降10年以上です。
- 借地権設定者が更新を拒絶するには、遅滞ない異議に加えて正当事由が必要です。
- 借地権は、借地権者本人名義の借地上建物登記で第三者に対抗できます。
- 建物滅失後は、一定の掲示により原則として2年間、対抗力を維持できます。
- 一般定期借地権は50年以上で、書面または電磁的記録によって契約します。
- 事業用定期借地権は10年以上50年未満で、公正証書による契約が必要です。
- 建物譲渡特約付借地権は30年以上です。
- 普通借家の対抗要件は建物の引渡しです。
- 普通借家で1年未満の期間を定めると、期間の定めがないものとみなされます。
- 貸主側から普通借家を終了させるには、正当事由が必要です。
- 定期建物賃貸借は、書面または電磁的記録による契約と、更新がない旨の事前説明が必要です。
- 事前説明がない場合は、更新がない旨の定めが無効になります。
- 期間1年以上の定期建物賃貸借では、満了の1年前から6か月前までに終了通知が必要です。
- 定期建物賃貸借は1年未満でも有効で、更新はありませんが再契約はできます。
- 居住用200㎡未満でやむを得ない事情があるときは、賃借人から中途解約できます。
- 造作買取請求権は、特約によって排除できます。
- 取壊し予定建物の賃貸借は、取壊しの事由を記載した書面または電磁的記録で特約します。