表示ルール・禁止表示・景品上限を整理する
1本章の学習ポイント
景品表示法は、実際よりもよく見せる表示や、過大な景品によって消費者を誘引する行為を規制する法律です。不動産広告では、景品表示法に加えて、公正競争規約が定める具体的な表示ルールも重要になります。
学習の全体像
この章では、景品表示法と公正競争規約の関係、広告を始められる時期、予告広告と本広告、取引態様、徒歩所要時間、新築表示、特定事項の明示、不当表示・おとり広告、景品類の上限までを順に整理します。
試験対策
数字だけを覚えるのではなく、どの制度に対応する数字かをセットで確認しましょう。特に「徒歩80mにつき1分」「新築は建築後1年未満かつ未入居」「景品上限は2つの金額のうち低い方」が頻出です。
【判断の順番】
最初に「表示のルール」か「景品の上限」かを分けます。そのうえで、広告時期・物件表示・不当表示のどこが問われているかを確認します。
2景品表示法と公正競争規約
景品表示法は、商品やサービス全般について、不当な表示と過大な景品類の提供を規制します。不動産広告に限った法律ではありません。
一方、不動産分野では、業界の自主ルールである公正競争規約が、広告の表示方法や景品類の上限を具体的に定めています。公正競争規約は、広告表示を扱う「表示規約」と、景品類を扱う「景品規約」に分けて整理します。
| 区分 | 主な内容 | 試験での確認点 |
|---|---|---|
| 景品表示法 | 優良誤認・有利誤認などの不当表示と、過大な景品類を規制 | 法律そのものの規制 |
| 表示規約 | 不動産広告の交通、価格、面積、取引態様、新築表示などを具体化 | 表示方法と明示事項 |
| 景品規約 | 不動産取引に伴って提供できる景品類の上限を規定 | 懸賞・総付景品の数字 |
| 共通する目的 | 消費者の誤認を防ぎ、合理的な選択を守る | 法律と規約は同じものではない |
【注意ポイント】
「景品表示法」「表示規約」「景品規約」は、それぞれ役割が異なります。問題文が何を根拠にしたルールなのかを見分けましょう。
3広告開始時期・予告広告・本広告
未完成の宅地や建物を広告する場合は、開発許可や建築確認など、工事に必要な許可等の処分を受けた後でなければ広告を開始できません。これは宅建業法上の広告開始時期の制限です。
価格や賃料がまだ確定しておらず、すぐに取引できない段階では予告広告を行います。予告広告であること、価格・賃料が未定であること、販売予定時期や取引開始予定時期などを明示します。
予告広告を行った場合でも、取引を始める前に本広告が必要です。本広告を行うまでは、契約や予約の申込みを受けたり、申込み順位を確保したりすることはできません。
| 段階 | できること・必要な表示 | できないこと |
|---|---|---|
| 許可等の処分前 | 広告の準備 | 未完成物件の広告開始 |
| 許可等の処分後 | 広告を開始できる | 必要事項を省略した広告 |
| 予告広告 | 予告広告である旨、価格・賃料未定、予定時期等を表示 | 契約・予約申込みの受付、申込み順位の確保 |
| 本広告 | 必要事項を表示し、取引開始前に実施 | 本広告なしで取引開始 |
【重要ポイント】
予告広告は、申込みを受けるための広告ではありません。「予告広告→本広告→申込み」の順番を守ります。
4取引態様・交通・特定用語
不動産広告では、広告主がどの立場で取引に関与するのかを明示します。取引態様は、売主・貸主・代理・媒介などです。消費者が誰と契約するのか、仲介手数料が生じる可能性があるのかを判断するための重要な表示です。
徒歩所要時間は、道路距離80mにつき1分として計算します。1分未満の端数は、1分として切り上げます。直線距離や実際に歩いて測った時間ではありません。
「新築」と表示できるのは、建築後1年未満で、まだ居住に使用されたことがない物件です。建築後1年未満でも、すでに入居された物件は新築とは表示できません。
また、「完全」「絶対」「日本一」「最高」「格安」など、著しく優良・有利である印象を与える用語は、客観的な根拠がなければ使用できません。
| 項目 | ルール | ひっかけ対策 |
|---|---|---|
| 取引態様 | 売主・貸主・代理・媒介などを明示 | 広告主の立場を確認 |
| 徒歩所要時間 | 道路距離80mにつき1分 | 直線距離・実測時間ではない |
| 端数処理 | 1分未満は1分に切り上げ | 切り捨てない |
| 新築表示 | 建築後1年未満かつ未入居 | どちらか一方だけでは不可 |
| 特定用語 | 客観的な根拠がある場合に限り使用 | 強い表現だけで判断しない |
【注意ポイント】
徒歩所要時間は、出入口から目的地までの道路距離を基準に計算します。80m未満の端数も1分として数えます。
5特定事項の明示
物件に不利な条件があるにもかかわらず、その事情を広告に示さなければ、消費者は通常どおり建築・利用できる物件だと誤解するおそれがあります。そのため、建築制限や有効面積の減少、利用上の制約に関する事項は、広告で明示します。
代表例は、市街化調整区域、接道義務を満たさない土地、路地状部分、セットバック部分、高圧線下、傾斜地などです。路地状部分や傾斜地がおおむね30%以上を占める場合、セットバック部分がおおむね10%以上を占める場合は、割合や面積も表示します。
| 対象 | 明示する内容 | 判断のポイント |
|---|---|---|
| 市街化調整区域 | 建築・造成が制限される区域であること | 都市計画法上の制限 |
| 接道義務を満たさない土地 | 建築不可・再建築不可など | 建築基準法上の制限 |
| 路地状部分 | 路地状部分を含む旨と、必要に応じて割合・面積 | おおむね30%以上 |
| セットバック部分 | セットバックを要する旨と、必要に応じて面積 | おおむね10%以上 |
| 高圧線下・傾斜地 | 利用制限や有効利用への影響 | 傾斜地はおおむね30%以上なら割合・面積 |
【判断の視点】
物件に不利な情報であっても、省略してよいわけではありません。「建築できるか」「実際に使える面積はどの程度か」「利用制限があるか」の3方向から確認します。
6不当表示・おとり広告
景品表示法は、品質や内容を実際より著しくよく見せる優良誤認表示と、価格などの取引条件を実際より著しく有利に見せる有利誤認表示を禁止しています。不動産広告では、価格、交通、築年数、設備、ローン条件、写真や図面などが問題になります。
おとり広告は、存在しない物件だけを対象とするものではありません。物件が存在していても、すでに成約済みで取引できない場合や、広告主に実際の取引意思がなく客寄せだけを目的としている場合も、おとり広告に該当します。
| 類型 | 内容 | 不動産広告の例 |
|---|---|---|
| 優良誤認 | 品質・内容を実際より著しく優良と誤認させる | 実際と異なる設備・築年数・写真 |
| 有利誤認 | 価格や取引条件を実際より著しく有利と誤認させる | 実際には適用されない価格・ローン条件 |
| おとり広告① | 物件そのものが存在しない | 架空物件 |
| おとり広告② | 物件は存在するが取引対象にならない | 成約済み物件を掲載し続ける |
| おとり広告③ | 物件は存在するが取引意思がない | 客寄せ目的の掲載 |
【ひっかけ注意】
おとり広告は「物件が存在するか」だけでは判断できません。実際に取引できるか、広告主に取引意思があるかまで確認します。
7景品類の提供制限
景品規約では、不動産取引に伴って提供できる景品類の上限を定めています。抽選などで一部の人に提供する懸賞景品と、購入者全員・来場者全員・先着順などでもれなく提供する総付景品では、上限の計算方法が異なります。
一般懸賞の個別上限は、取引価額の20倍または10万円のうち低い額です。さらに、景品総額は取引予定総額の2%以内です。
懸賞によらない景品の上限は、取引価額の10%または100万円のうち低い額です。共同懸賞では、個別上限は30万円、景品総額は取引予定総額の3%以内です。
| 区分 | 個別の上限 | 景品総額の上限 | 例 |
|---|---|---|---|
| 一般懸賞 | 取引価額の20倍または10万円の低い方 | 取引予定総額の2%以内 | 抽選・クイズ等 |
| 総付景品 | 取引価額の10%または100万円の低い方 | ― | 来場者全員・購入者全員・先着順 |
| 共同懸賞 | 30万円 | 取引予定総額の3%以内 | 複数事業者等による共同懸賞 |
【最重要】
上限額が2つ示されている場合は、高い方ではなく低い方を使います。まず「懸賞か、総付景品か」を区別してから計算します。
8ひっかけ対策
景品表示法・公正競争規約では、数字の入れ替えや、要件の一部だけを示す問題が多く出題されます。正しい数字を覚えるだけでなく、どの制度の数字か、要件が「かつ」なのか「または」なのかを確認しましょう。
| 論点 | 正しい整理 | 誤りやすい読み方 |
|---|---|---|
| 徒歩所要時間 | 道路距離80mにつき1分、端数切り上げ | 100mにつき1分、実測時間 |
| 新築 | 建築後1年未満かつ未入居 | 1年未満だけで新築 |
| 予告広告 | 本広告前は申込み受付・順位確保不可 | 価格未定でも予約申込み可 |
| おとり広告 | 不存在・取引不可・取引意思なしの3類型 | 存在する物件なら問題なし |
| 一般懸賞 | 20倍または10万円の低い方、総額2%以内 | 高い方を採用 |
| 総付景品 | 10%または100万円の低い方 | 一般懸賞と同じ上限 |
| 共同懸賞 | 30万円、総額3%以内 | 一般懸賞の10万円と混同 |
最後に押さえるポイント
- ・景品表示法は、不当表示と過大な景品類の提供を規制する法律です。
- ・不動産広告では、表示規約と景品規約を分けて整理します。
- ・未完成物件は、開発許可・建築確認など必要な許可等の処分後でなければ広告できません。
- ・予告広告を行っても、本広告前に契約・予約の申込みや申込み順位の確保はできません。
- ・取引態様は、売主・貸主・代理・媒介などを明示します。
- ・徒歩所要時間は、道路距離80mにつき1分で計算し、端数は切り上げます。
- ・新築と表示できるのは、建築後1年未満かつ未入居の物件です。
- ・客観的な根拠のない「完全」「絶対」「日本一」「最高」「格安」などの表示に注意します。
- ・路地状部分・傾斜地はおおむね30%以上、セットバック部分はおおむね10%以上の場合、割合・面積の表示が重要です。
- ・おとり広告は、存在しない物件だけでなく、取引できない物件や取引意思のない物件も対象です。
- ・一般懸賞は、取引価額の20倍または10万円の低い方が個別上限で、総額は2%以内です。
- ・総付景品は、取引価額の10%または100万円の低い方が上限です。
- ・共同懸賞は30万円が個別上限で、総額は3%以内です。
- ・景品上限は、示された2つの金額のうち低い方を採用します。