持分・決定方法・分割で整理
1本章の学習ポイント
共有とは、1つの物を複数人が持分という割合で所有している状態です。土地を共同で購入した場合や、相続によって1つの不動産を複数人が受け継いだ場合などに生じます。
学習の全体像
この章では、共有持分と共有物の使用、自己持分の処分、持分の放棄、保存・管理・変更の決定方法、共有物の管理者、共有物分割、所在等不明共有者に関する制度、所有者不明・管理不全の管理制度までを順に整理します。
試験対策
問題では、行為の対象が「自己の持分」なのか「共有物全体」なのかを最初に確認します。そのうえで、保存行為は単独、管理行為と軽微変更は持分価格の過半数、重大な変更は全員同意という基準を当てはめます。不分割特約の5年や、所在等不明共有者がいる場合の裁判所手続も重要です。
【この章の見方】
「何を対象に、どのような行為をするのか」を確認し、単独・持分価格の過半数・全員同意のどれが必要かを判断します。
2共有の基本
共有では、1つの物を場所ごとに分けて所有するのではありません。各共有者が、共有物全体について割合的な権利を持ちます。この割合を共有持分といいます。
持分割合を定めているときは、その割合に従います。割合が明らかでない場合は、各共有者の持分は同じものと推定されます。
共有に関する問題は、共有物の使用、自己持分の処分、共有物に対する保存・管理・変更、共有関係を解消するための分割という順に整理すると判断しやすくなります。
| 項目 | 確認ポイント |
|---|---|
| 共有 | 1つの物を複数人で所有する状態。共同購入や共同相続などで生じる |
| 共有者 | 共有物全体について、持分に応じた割合的な権利を持つ人 |
| 共有持分 | 各共有者の所有割合。割合が不明なときは相等しいものと推定される |
| 単独所有との違い | 共有では、保存・管理・変更などの決定方法を確認する必要がある |
【重要ポイント】
共有は、共有物をA部分・B部分と場所で分ける制度ではありません。各共有者の持分は、共有物全体に及びます。
3共有持分と使用ルール
各共有者は、共有物全体を持分に応じて使用できます。持分が小さいからといって、共有物の一部分だけしか使用できないわけではありません。
もっとも、1人の共有者が自己の持分を超えて共有物を使用している場合は、別段の合意がない限り、他の共有者に対して使用の対価を償還しなければなりません。
共有物を使用する共有者には、善良な管理者の注意をもって共有物を扱う義務があります。また、共有物から生じる収益や管理費用は、原則として持分に応じて配分・負担します。
| 項目 | 確認ポイント |
|---|---|
| 使用 | 各共有者は、共有物全体を持分に応じて使用できる |
| 持分を超える使用 | 別段の合意がなければ、他の共有者へ使用の対価を償還する必要がある |
| 注意義務 | 共有物を使用する共有者は、善良な管理者の注意をもって使用する |
| 収益・費用 | 共有物から生じる収益や管理費用は、原則として持分に応じて配分・負担する |
【注意ポイント】
共有物全体を使用できることと、自由に独占使用できることは同じではありません。持分を超える使用では、使用対価の負担を確認します。
4持分の処分・放棄
共有者は、自己の持分だけであれば、他の共有者の同意を得ずに処分できます。自己持分の売却・譲渡や、自己持分への抵当権設定などは、原則として単独で行えます。
これに対し、共有物全体を売却したり、共有物全体に抵当権を設定したりする行為は、共有物の重大な変更に当たります。そのため、原則として共有者全員の同意が必要です。
共有者が自己の持分を放棄した場合、その持分は他の共有者に帰属します。共有者が死亡し、相続人がいない場合も、その持分は他の共有者に帰属します。
| 項目 | 確認ポイント |
|---|---|
| 自己持分の処分 | 他の共有者の同意なく単独でできる。売却・譲渡・抵当権設定など |
| 共有物全体の処分 | 原則として共有者全員の同意が必要。全体売却・全体への抵当権設定など |
| 持分の放棄 | 放棄した共有者の持分は、他の共有者に帰属する |
| 死亡・相続人なし | 相続人がいない共有者の持分は、他の共有者に帰属する |
【判断のコツ】
問題文では、目的語を先に確認します。「自己の持分」なら単独処分、「共有物全体」なら原則として全員同意です。
5保存・管理・変更
共有で最も重要なのは、共有物に対する行為が、保存行為・管理行為・変更行為のどれに当たるかを判断することです。行為の種類によって、必要な決定方法が変わります。
保存行為は、共有物の現状を維持するための行為です。各共有者が単独で行えます。たとえば、共有物の修繕、不法占拠者への明渡請求、無権利者に対する登記抹消請求などが該当します。
ただし、不法占拠者に損害賠償を請求するときは、各共有者が自己の持分割合に応じた金額を請求します。共有物全体の明渡請求と、金銭である損害賠償請求は区別しましょう。
管理行為は、共有物の利用や改良に関する行為です。持分価格の過半数で決めます。賃貸借契約の解除、管理者の選任・解任なども管理行為として扱います。ただし、その決定によって共有物を使用している共有者に特別の影響が及ぶ場合は、その共有者の承諾が必要です。
形状または効用の著しい変更を伴わない軽微な変更も、持分価格の過半数で決められます。一方、共有物全体の売却、共有物全体への抵当権設定、建物の建替え、地目変更など、重大な変更には共有者全員の同意が必要です。
一定期間を超えない賃借権などの設定は、管理行為として持分価格の過半数で決められます。期間は、樹木の植栽・伐採を目的とする山林が10年、その他の土地が5年、建物が3年、動産が6か月以下です。
| 行為 | 決定方法・具体例 |
|---|---|
| 保存行為 | 各共有者が単独でできる。修繕、明渡請求、登記抹消請求など |
| 損害賠償請求 | 各共有者が自己の持分割合に応じて請求する |
| 管理行為 | 持分価格の過半数。利用・改良、賃貸借契約の解除、管理者の選任・解任など |
| 特別の影響 | 管理決定が使用共有者に特別の影響を及ぼすときは、その共有者の承諾が必要 |
| 短期賃貸借等 | 山林10年、その他の土地5年、建物3年、動産6か月以下なら管理行為として決定 |
| 軽微変更 | 形状または効用の著しい変更を伴わない変更。持分価格の過半数 |
| 重大な変更 | 全員同意。共有物全体の売却・抵当権設定、建替え、地目変更など |
【最重要】
管理行為の過半数は、共有者の人数ではなく持分価格で判断します。1人の共有者が過半数の持分を持っていれば、その1人で要件を満たすことがあります。
6管理者・所在等不明共有者・費用不払い
共有者は、共有物の管理を担当する管理者を選任できます。管理者の選任と解任は、持分価格の過半数で決めます。管理者は共有物の管理に関する行為を行いますが、重大な変更を自由に行えるわけではありません。
共有者の中に、氏名や所在を知ることができない者がいると、過半数や全員同意による決定が進められない場合があります。このようなときは、裁判所の決定により、その所在等不明共有者を除いて管理や変更を決められることがあります。
もっとも、他の共有者が自分たちだけの判断で所在等不明共有者を除外することはできません。必ず裁判所の手続を利用する必要があります。
共有物の管理費用は、各共有者が持分に応じて負担します。費用を立て替えた共有者から求償を受けたにもかかわらず、共有者が1年以内に負担義務を履行しない場合、他の共有者は相当の償金を支払って、その共有者の持分を取得できることがあります。
| 項目 | 確認ポイント |
|---|---|
| 管理者の選任・解任 | 持分価格の過半数で決める。全員同意は不要 |
| 管理者の権限 | 共有物の管理に関する行為を行う。軽微変更を除く変更行為には原則として全員同意が必要 |
| 所在等不明共有者 | 裁判所の決定により、不明共有者を除いて管理・変更を決められる場合がある |
| 裁判所の関与 | 共有者だけの判断で、不明共有者を除外して決定することはできない |
| 管理費用の不払い | 求償後1年以内に履行しない場合、他の共有者が相当の償金を支払い、持分を取得できることがある |
【注意ポイント】
管理者を選んでも、重大な変更まで任せられるわけではありません。また、所在等不明共有者を除外するには裁判所の手続が必要です。
7共有物分割
各共有者は、原則としていつでも共有物の分割を請求できます。共有は、永久に続けなければならない関係ではありません。共有物分割は、共有関係を解消するための制度です。
共有者間で、一定期間、共有物を分割しない旨の特約を結ぶこともできます。ただし、不分割特約の期間は5年を超えることができません。更新する場合も、1回の更新期間は5年以内です。
分割は、まず共有者の協議によって行います。協議が調わない場合や、協議をすることができない場合は、裁判所に分割を請求できます。
裁判による分割では、共有物そのものを分ける現物分割や、1人または数人の共有者に共有物を取得させ、他の共有者へ価格を支払わせる賠償分割が基本です。これらの方法で分けることができない場合などには、競売分割が命じられることがあります。
当事者の協議では、共有物を売却し、その代金を持分に応じて分ける代金分割も選べます。相続によって生じた遺産共有については、共有物分割ではなく遺産分割のルールで処理する場合があるため、通常の共有と区別します。
| 項目 | 確認ポイント |
|---|---|
| 分割請求 | 各共有者は、原則としていつでも請求できる |
| 不分割特約 | 5年を超えない期間で定める。更新する場合も各更新期間は5年以内 |
| 現物分割 | 共有物そのものを分ける。土地を分筆して分ける場合など |
| 代金分割 | 共有物を売却し、その代金を持分に応じて分ける。協議による分割で利用 |
| 賠償分割 | 一部の共有者に共有物を取得させ、他の共有者へ持分価格を支払わせる |
| 競売分割 | 現物分割や賠償分割が困難な場合などに、裁判所が競売を命じることがある |
| 遺産共有 | 相続で生じた共有は、遺産分割のルールが適用される場合がある |
【数字の確認】
共有物を分割しない旨の特約は5年以内です。更新は可能ですが、各更新期間も5年を超えることはできません。
8所在等不明共有者の持分取得・譲渡権限
共有者の氏名や所在が分からない場合、共有物の売却や分割が進まないことがあります。そこで、裁判所の関与により、他の共有者が所在等不明共有者の持分を取得したり、その持分を第三者へ譲渡する権限を得たりできる制度が設けられています。
持分取得は、裁判所の裁判によって、請求した共有者が所在等不明共有者の持分を取得する制度です。持分譲渡権限は、共有物全体を特定の第三者へ譲渡するため、不明共有者の持分もあわせて譲渡できるようにする制度です。
持分譲渡権限は、所在等不明共有者以外の共有者全員が、その特定の第三者へ自己の持分を譲渡することを条件として認められます。どちらの制度も、他の共有者が勝手に不明者の持分を取得・処分できるものではなく、裁判所の手続が必要です。
持分取得が認められた場合でも、所在等不明共有者は時価相当額の支払いを求めることができます。また、不明共有者の持分が相続財産である遺産共有では、相続開始から10年を経過しているかどうかにも注意が必要です。
| 制度 | 確認ポイント |
|---|---|
| 持分取得 | 裁判所の裁判により、請求した共有者が所在等不明共有者の持分を取得できる |
| 持分譲渡権限 | 不明共有者以外の共有者全員が特定の第三者へ譲渡することを条件に、不明共有者の持分も譲渡できる |
| 裁判所の関与 | 他の共有者が勝手に不明共有者の持分を取得・処分することはできない |
| 時価相当額 | 持分を失った所在等不明共有者は、時価相当額の支払いを求めることができる |
| 遺産共有 | 不明共有者の持分が相続財産の場合は、相続開始から10年経過などを確認する |
【重要ポイント】
持分取得も持分譲渡権限も、裁判所の関与が前提です。他の共有者だけで不明共有者の持分を動かすことはできません。
9所有者不明管理・管理不全管理
共有に関連する制度として、所有者不明土地・建物管理制度と、管理不全土地・建物管理制度があります。いずれも、利害関係人の請求を受けて裁判所が管理人を選任する制度です。
所有者不明管理は、土地・建物の所有者やその所在を知ることができない場合に利用します。これに対し、管理不全管理は、所有者は分かっているものの、管理が不適当で、他人の権利や法律上保護される利益が害されるおそれがある場合に利用します。
選任された管理人は、保存行為や、管理対象となる土地・建物の性質を変えない範囲での利用・改良行為を行います。売却など、通常の権限を超える処分には裁判所の許可が必要です。管理不全管理では、原則として所有者の同意も確認します。
| 制度 | 確認ポイント |
|---|---|
| 所有者不明管理 | 所有者またはその所在を知ることができない土地・建物について、裁判所が管理人を選任する |
| 管理不全管理 | 所有者は判明しているが管理が不適当で、他人の利益が害されるおそれがある場合に管理人を選任する |
| 管理人の通常権限 | 保存行為や、性質を変えない範囲の利用・改良行為を行う |
| 権限を超える行為 | 処分などを行うには裁判所の許可が必要。管理不全管理では原則として所有者の同意も確認する |
| 入口の違い | 所有者不明は「誰の物か、どこにいるか不明」、管理不全は「所有者は分かるが管理が悪い」 |
【区別のコツ】
所有者不明管理は「所有者・所在が分からない」、管理不全管理は「所有者は分かるが管理が不適当」と整理します。
10区分所有との違い・横断比較
マンションの共用部分にも「共有」という考え方がありますが、民法上の共有とは別に、区分所有法の特別なルールが適用されます。問題文に共有という言葉があっても、すぐに民法上の共有と決めつけないようにしましょう。
民法上の共有では、各共有者は原則として共有物分割を請求できます。これに対し、区分所有建物の共用部分は専有部分に従属しており、共用部分だけを専有部分と分離して処分したり、原則として分割を請求したりすることはできません。
民法上の共有では、自己持分の処分は単独、保存行為は単独、管理行為と軽微変更は持分価格の過半数、重大な変更は全員同意と整理します。共有物分割をしない特約は5年以内で、所在等不明共有者がいる場合は裁判所の関与を確認します。
| 項目 | 確認ポイント |
|---|---|
| 民法上の共有 | 保存・管理・変更、持分処分、共有物分割を民法のルールで判断する |
| 区分所有法の共用部分 | 専有部分に従属し、原則として分離処分や分割請求ができない |
| 持分と全体 | 自己持分は単独で処分できる。共有物全体の処分は原則として全員同意 |
| 決定方法 | 保存は単独、管理・軽微変更は持分価格の過半数、重大変更は全員同意 |
| 分割・不明共有者 | 不分割特約は5年以内。所在等不明共有者がいる場合は裁判所の手続を確認する |
最後に押さえるポイント
- 共有は、1つの物を複数人が持分という割合で所有する状態です。
- 各共有者の持分は、共有物の特定部分ではなく共有物全体に及びます。
- 持分割合が明らかでない場合は、各共有者の持分は相等しいものと推定されます。
- 各共有者は、共有物全体を持分に応じて使用できます。
- 持分を超えて共有物を使用する場合は、別段の合意がなければ他の共有者へ使用の対価を償還します。
- 共有物の収益と管理費用は、原則として持分に応じて配分・負担します。
- 自己持分は、他の共有者の同意なく単独で処分できます。
- 共有物全体の処分や重大な変更には、原則として共有者全員の同意が必要です。
- 持分を放棄した場合や、共有者が死亡して相続人がいない場合、その持分は他の共有者に帰属します。
- 保存行為は、各共有者が単独で行えます。
- 管理行為は、共有者の人数ではなく持分価格の過半数で決めます。
- 軽微変更は持分価格の過半数、重大な変更は共有者全員の同意が必要です。
- 短期賃貸借等は、山林10年、その他の土地5年、建物3年、動産6か月以下です。
- 共有物の管理者の選任・解任は、持分価格の過半数で決めます。
- 所在等不明共有者を除いて管理・変更を決めるには、裁判所の手続が必要です。
- 管理費用の求償後1年以内に支払わない共有者については、相当の償金を支払って持分を取得できる場合があります。
- 各共有者は、原則としていつでも共有物分割を請求できます。
- 不分割特約は5年以内で、更新する場合も各更新期間は5年以内です。
- 裁判による分割では、現物分割・賠償分割を基本とし、必要に応じて競売分割が行われます。
- 所在等不明共有者の持分取得・持分譲渡権限には、裁判所の関与が必要です。
- 遺産共有で所在等不明共有者の制度を利用する場合は、相続開始から10年の経過にも注意します。
- 所有者不明管理は所有者・所在が不明な場合、管理不全管理は所有者は分かるが管理が不適当な場合です。
- 区分所有建物の共用部分には、民法上の共有とは別に区分所有法の特別ルールが適用されます。