新築住宅・売主業者・供託または保険で整理
1本章の学習ポイント
住宅瑕疵担保履行法は、新築住宅に重大な瑕疵が見つかったとき、売主宅建業者が倒産していても買主保護につなげる制度です。中心は、供託または保険による資力確保措置です。
学習の全体像
この章では、対象となる新築住宅、10年責任、資力確保措置が必要な場面、供託、保険、基準日と届出、契約締結制限、供託所所在地等の説明、還付・取戻し、指定住宅紛争処理機関を確認します。
試験対策
試験では、新築住宅・売主宅建業者・非業者買主、完成後1年以内・未入居、引渡しから10年、毎年3月31日、3週間以内の届出、翌日から50日経過後の契約制限が狙われます。35条説明や営業保証金と混同しないようにします。
2対象となる新築住宅と10年責任
対象となる新築住宅は、完成後1年以内で、まだ人の居住の用に供したことがない住宅です。新築マンションも新築戸建住宅も対象になりますが、中古住宅はこの制度の新築住宅には当たりません。
責任の対象は、住宅のすべての不具合ではありません。中心は、構造耐力上主要な部分と雨水の浸入を防止する部分です。
売主は、これらの部分について、引渡しから10年間の責任を負います。住宅瑕疵担保履行法は、その10年責任を実際に履行できるよう、供託または保険で支える制度です。
ここでいう住宅は、人の居住の用に供する家屋または家屋の部分です。店舗や事務所だけの建物は、住宅として扱いません。
| 項目 | 確認ポイント |
|---|---|
| 新築住宅 | 完成後1年以内で、人の居住の用に供したことがない住宅 |
| 住宅の意味 | 人の居住の用に供する家屋または家屋の部分。店舗・事務所だけの建物は対象外 |
| 中古住宅 | この制度の新築住宅には当たらない |
| 対象部分 | 構造耐力上主要な部分、雨水の浸入を防止する部分 |
| 10年責任 | 買主に引き渡した時から10年間、対象部分の瑕疵について責任を確認 |
| 注意 | 住宅のすべての不具合が資力確保措置の中心になるわけではない |
3資力確保措置が必要な場面
資力確保措置が必要になるのは、宅建業者が自ら売主となって、新築住宅を宅建業者ではない買主に売る場合です。
買主が一般消費者である場合だけでなく、買主が建設業者であっても、宅建業者でなければ対象として確認します。判断基準は、買主が宅建業者かどうかです。
買主が宅建業者である業者間取引、中古住宅の売買、新築住宅の媒介・代理だけをする宅建業者には、この資力確保措置の義務はありません。
建設業者は請負契約側、宅建業者は売買契約側で資力確保措置を確認します。このページでは、宅建業者が新築住宅を自ら売る場面に絞ります。
| 項目 | 確認ポイント |
|---|---|
| 必要な場面 | 宅建業者が自ら売主となり、宅建業者ではない買主に新築住宅を売る場合 |
| 買主が建設業者 | 宅建業者でなければ保護対象として確認 |
| 業者間取引 | 買主が宅建業者なら不要 |
| 中古住宅 | この資力確保措置は不要 |
| 媒介・代理のみ | 売主ではない宅建業者には資力確保措置の義務なし |
| 建設業者との違い | 建設業者は請負契約側、宅建業者は売買契約側で確認 |
【注意ポイント】資力確保は売主業者の義務
問題文に「媒介」「代理」とある場合は、売主ではない可能性を先に確認します。義務を負うのは、新築住宅を自ら売る宅建業者です。
4資力確保措置の基本
資力確保措置には、住宅販売瑕疵担保保証金を供託する方法と、住宅販売瑕疵担保責任保険契約を締結する方法があります。
供託は、引き渡した新築住宅の戸数に応じて保証金を供託所に用意する方法です。保険は、住宅瑕疵担保責任保険法人との契約により、瑕疵があったときの損害てん補につなげる方法です。
宅建業者は、供託または保険のいずれかで資力を確保します。両方を必ず行う必要はありません。
| 項目 | 確認ポイント |
|---|---|
| 供託 | 住宅販売瑕疵担保保証金を供託所へ供託する |
| 保険 | 住宅販売瑕疵担保責任保険契約を締結する |
| 選択関係 | 供託または保険のいずれかで資力確保措置を講じる |
| 35条書面との関係 | 契約不適合責任の履行確保措置として説明事項になる場面を確認 |
| 注意 | 35条の宅建士説明と、履行法上の供託所所在地等の説明は別制度 |
5住宅販売瑕疵担保保証金の供託
住宅販売瑕疵担保保証金を供託する場合、宅建業者は、基準日時点で必要な額を供託しておく必要があります。
供託額は、基準日前10年間に引き渡した新築住宅のうち、保険契約の対象住宅を除いた戸数に応じて決まります。床面積55㎡以下の住宅は、2戸をもって1戸として扱える点も重要です。
供託場所は、主たる事務所の最寄りの供託所です。金銭だけでなく、有価証券、金銭と有価証券の併用による供託もできます。
有価証券を供託に充てる場合は、評価率も確認します。国債は100%、地方債・政府保証債は90%、その他の債券は80%で評価します。
| 項目 | 確認ポイント |
|---|---|
| 供託額の算定 | 基準日前10年間に引き渡した新築住宅のうち、保険対象住宅を除いた戸数に応じて決まる |
| 55㎡以下の住宅 | 床面積55㎡以下の住宅は、2戸をもって1戸として扱える |
| 供託場所 | 主たる事務所の最寄りの供託所 |
| 供託できるもの | 金銭、有価証券、金銭と有価証券の併用 |
| 有価証券の評価 | 国債は100%、地方債・政府保証債は90%、その他の債券は80% |
| 不足額の供託 | 必要額に不足があれば、不足額を供託して不足状態を解消する |
6基準日・届出・契約締結制限
基準日は、毎年3月31日です。宅建業者は、基準日時点で、必要な供託または保険の状況を確認します。
資力確保措置の状況については、基準日から3週間以内に免許権者へ届け出ます。3月31日基準日なら、通常は4月21日までに届出を行うイメージです。
届出をしないと、基準日の翌日から起算して50日を経過した日以後、新たに自ら売主となる新築住宅の売買契約を締結できなくなります。
基準日の直前や当日に引き渡した住宅も、資力確保措置と届出の対象になります。4月21日が行政機関の休日に当たるときは、翌開庁日までに届け出る扱いを確認します。
| 項目 | 確認ポイント |
|---|---|
| 基準日 | 毎年3月31日 |
| 届出先 | 免許権者 |
| 届出期間 | 基準日から3週間以内 |
| 直前・当日の引渡し | 基準日の直前や当日に引き渡した新築住宅も届出対象 |
| 休日の場合 | 届出期限日が行政機関の休日に当たるときは翌開庁日 |
| 届出を怠った場合 | 基準日の翌日から起算して50日を経過した日以後、新たに自ら売主となる新築住宅の売買契約を締結できない |
| 注意 | すでに引き渡した住宅の責任が消えるわけではない |
【注意ポイント】契約制限は翌日から50日経過後
届出をしない場合の制限は、基準日その日からではなく、基準日の翌日から起算します。3週間以内の届出期限とは別に確認します。
7供託所所在地等の説明
住宅販売瑕疵担保保証金を供託している宅建業者は、自ら売主となる新築住宅の売買契約を締結するまでに、買主に供託所の所在地等を説明しなければなりません。
この説明は、35条書面の重要事項説明とは別制度です。説明担当者について、宅建士でなければならないという特別な資格制限はありません。
買主の承諾があれば、書面交付に代えて電磁的方法で提供することもできます。いずれにしても、売買契約を締結するまでに行う点を押さえます。
説明内容は、供託所の名称・所在地、供託している住宅販売瑕疵担保保証金の額などです。供託している場合の説明であり、保険契約を締結している場合の保険証券等の交付とは分けます。
| 項目 | 確認ポイント |
|---|---|
| 説明する者 | 保証金を供託している売主宅建業者 |
| 相手方 | 自ら売主となる新築住宅の買主 |
| 時期 | 売買契約を締結するまで |
| 説明内容 | 供託所の名称・所在地、供託している保証金の額など |
| 方法 | 書面を交付して説明。買主の承諾があれば電磁的方法による提供も可能 |
| 35条との違い | 重要事項説明とは別制度。宅建士による説明とは限らない |
| 保険との違い | 供託ルートでは供託所所在地等の説明、保険ルートでは保険証券等の交付を確認 |
8住宅販売瑕疵担保責任保険
保険による資力確保措置では、宅建業者が住宅瑕疵担保責任保険法人との間で住宅販売瑕疵担保責任保険契約を締結します。
保険料を支払うのは、買主ではなく売主宅建業者です。保険金額は2,000万円以上とされ、構造耐力上主要な部分や雨水の浸入を防止する部分の瑕疵を対象にします。
保険契約を締結した場合、保険証券またはこれに代わる書面を買主へ交付します。供託ルートと保険ルートを分けて確認します。
保険契約は、新築住宅の引渡し時から10年以上有効なものとして確認します。売主宅建業者が倒産している場合でも、買主保護につながる点がこの制度の目的です。
| 項目 | 確認ポイント |
|---|---|
| 契約の主体 | 宅建業者が住宅瑕疵担保責任保険法人と契約 |
| 保険料 | 売主宅建業者が支払う |
| 保険金額 | 2,000万円以上 |
| 保険期間 | 新築住宅の引渡し時から10年以上有効な保険契約として確認 |
| 対象となる瑕疵 | 構造耐力上主要な部分、雨水の浸入を防止する部分の瑕疵 |
| 保険証券等 | 保険証券またはこれに代わる書面を買主へ交付 |
| 注意 | 買主が保険料を支払う、買主が保険契約を結ぶ、という表現に注意 |
9保証金の還付・取戻し
住宅販売瑕疵担保保証金を供託している場合、対象となる新築住宅に瑕疵があり買主が損害を受けたとき、買主は保証金から弁済を一定の手続により受けられます。これを還付として確認します。
還付などにより保証金が基準額に不足した場合、宅建業者は不足額を供託する必要があります。還付通知書を受けた日などから2週間以内という数字が重要です。
反対に、基準日に必要額を超えて保証金を供託している場合は、一定の手続により超過額を取り戻せます。取戻しには免許権者の承認を確認します。
還付の対象は、新築住宅の構造耐力上主要な部分や雨水浸入防止部分の瑕疵による損害です。宅建取引全般を守る営業保証金とは、保護する債権の範囲が違います。
| 項目 | 確認ポイント |
|---|---|
| 還付 | 瑕疵により損害を受けた買主が、供託された保証金から弁済を受ける場合を確認 |
| 還付の対象範囲 | 新築住宅の構造・雨水部分の瑕疵による損害。宅建取引全般ではない |
| 不足額供託 | 還付などで基準額に不足が生じた場合、不足額を供託する |
| 2週間 | 還付通知書を受けた日などから2週間以内に不足額を供託 |
| 届出 | 不足額を供託した後、免許権者への届出を確認 |
| 取戻し | 基準額を超える供託がある場合、免許権者の承認を受けて超過額を取り戻せる |
10指定住宅紛争処理機関
住宅瑕疵担保責任保険が付された住宅などでは、紛争が生じたときに、指定住宅紛争処理機関による手続を利用できるものとして確認します。
指定住宅紛争処理機関は、当事者間の紛争について、あっせん、調停、仲裁などの手続により解決を支援する機関です。
宅建試験では、供託・保険の資力確保措置と、紛争処理の仕組みを分けて確認します。資力を確保する制度そのものと、紛争解決の窓口は役割が違います。
利用対象として、建設住宅性能評価書が交付された住宅や、住宅瑕疵担保責任保険が付された住宅を確認します。すべての住宅紛争が当然にこの手続へ進むわけではありません。
| 項目 | 確認ポイント |
|---|---|
| 指定住宅紛争処理機関 | 住宅に関する紛争について手続を行う機関 |
| 手続 | あっせん、調停、仲裁など |
| 対象の確認 | 保険付き住宅などで利用が確認される |
| 対象住宅 | 建設住宅性能評価書が交付された住宅、保険付き住宅など |
| 資力確保との違い | 供託・保険は責任履行のための資金確保、紛争処理機関は紛争解決の仕組み |
| 注意 | 保険契約を締結すれば、紛争が自動的に解決するわけではない |
1135条書面・営業保証金との比較
住宅瑕疵担保履行法は、35条書面や営業保証金制度と混同しやすい分野です。それぞれ目的と相手方が違います。
35条書面では、契約前に重要事項を説明します。住宅瑕疵担保履行法では、売主宅建業者の資力確保措置や供託所所在地等の説明を確認します。
営業保証金は、宅建業者と取引した人の債権を保護する制度です。住宅販売瑕疵担保保証金は、新築住宅の特定の瑕疵について、売主宅建業者の責任履行を確保する制度です。
手付金等保全措置は、契約前後に買主から受け取る手付金等を保護する制度です。住宅販売瑕疵担保保証金は、引渡し後の新築住宅の特定部分の瑕疵に備える制度です。
| 項目 | 確認ポイント |
|---|---|
| 35条書面 | 契約前に重要事項を説明する宅建業法上の制度 |
| 供託所所在地等の説明 | 保証金を供託している売主業者が契約締結までに買主へ行う説明 |
| 営業保証金 | 宅建業者と宅建取引をした人の債権を保護する制度 |
| 手付金等保全措置 | 手付金等を保護する制度。住宅販売瑕疵担保保証金とは保護対象が違う |
| 住宅販売瑕疵担保保証金 | 新築住宅の構造・雨水部分の瑕疵について、責任履行を確保する制度 |
| 注意 | 営業保証金と住宅販売瑕疵担保保証金を混同しない |
12ひっかけ対策
住宅瑕疵担保履行法のひっかけは、対象者、物件、数字、説明担当者で出ます。まず、新築住宅の売主宅建業者か、買主が宅建業者ではないかを確認します。
完成後1年以内でも、人が住んだことがある住宅は新築住宅として扱いません。中古住宅や業者間取引にも、資力確保措置をそのまま広げないようにします。
数字では、10年、55㎡、3月31日、3週間、50日、2,000万円、2週間が狙われます。供託所所在地等の説明は35条書面とは別制度で、宅建士でなければならないわけではありません。
また、住宅全体のすべての不具合が対象になるわけではありません。構造耐力上主要な部分と雨水の浸入を防止する部分を中心に確認します。
| 項目 | 確認ポイント |
|---|---|
| 対象者 | 売主宅建業者、買主が宅建業者ではないことを確認 |
| 物件 | 完成後1年以内かつ未入居の新築住宅 |
| 対象部分 | 住宅全体のすべての不具合ではなく、構造耐力上主要な部分と雨水浸入防止部分 |
| 数字 | 10年、55㎡、3月31日、3週間、50日、2,000万円、2週間 |
| 有価証券評価 | 供託では国債100%、地方債・政府保証債90%、その他債券80%も確認 |
| 供託と保険 | どちらか一方でよい。両方必須ではない |
| 説明担当者 | 供託所所在地等の説明は宅建士限定ではない |
| 比較 | 35条書面、営業保証金、手付金等保全措置と混同しない |
【注意ポイント】35条説明とは別制度
供託所所在地等の説明は、住宅瑕疵担保履行法上の説明です。35条の重要事項説明と異なり、宅建士が説明者である必要はありません。
13最後に押さえるポイント
- 住宅瑕疵担保履行法は、新築住宅の買主を保護するための制度です。
- 対象は、完成後1年以内で、人が住んだことがない新築住宅です。
- 責任範囲は、構造耐力上主要な部分と雨水の浸入を防止する部分です。
- 売主は、引渡しから10年間の責任を負います。
- 資力確保措置が必要なのは、宅建業者が自ら売主となり、宅建業者ではない買主に新築住宅を売る場合です。
- 買主が宅建業者である業者間取引では不要です。
- 媒介・代理だけをする宅建業者には、資力確保措置の義務はありません。
- 資力確保措置は、住宅販売瑕疵担保保証金の供託、または住宅販売瑕疵担保責任保険契約です。
- 供託額は、基準日前10年間の対象戸数を基準にします。
- 55㎡以下の住宅は、2戸をもって1戸として扱えます。
- 供託場所は、主たる事務所の最寄りの供託所です。
- 基準日は毎年3月31日です。
- 基準日から3週間以内に、免許権者へ届出をします。
- 届出をしないと、基準日の翌日から50日経過後、新たな新築住宅売買契約を締結できません。
- 供託所所在地等の説明は、契約締結までに行います。
- 供託所所在地等の説明は、35条書面の宅建士説明とは別制度です。
- 保険契約では、売主宅建業者が保険法人と契約し、保険料も売主宅建業者が負担します。
- 保険金額は2,000万円以上です。
- 還付で保証金が不足した場合、不足額供託と2週間を確認します。
- 営業保証金と住宅販売瑕疵担保保証金は、目的が違います。
- 住宅は、人の居住の用に供する家屋または家屋の部分です。
- 店舗・事務所だけの建物は、この制度の住宅として扱いません。
- 基準日の直前や当日に引き渡した新築住宅も、資力確保措置と届出の対象です。
- 供託で有価証券を使う場合は、国債100%、地方債・政府保証債90%、その他債券80%で評価します。
- 保険契約は、引渡し時から10年以上有効なものとして確認します。
- 指定住宅紛争処理機関は、評価住宅や保険付き住宅などの紛争解決手続として確認します。
- 手付金等保全措置、営業保証金、住宅販売瑕疵担保保証金は、保護対象が違います。