報酬の制限

「取引の種類・立場・税・特例」で整理

1本章の学習ポイント

報酬の制限は、宅建業者が媒介または代理をしたときに受け取れる金額の上限を定めたルールです。依頼者と合意していても、国土交通大臣が定める限度額を超えて受領することはできません。

学習の全体像

報酬額を計算するときは、最初に「売買・交換か、貸借か」を分け、次に「媒介か、代理か」を確認します。その後、消費税、権利金、空家等に関する特例の有無を当てはめます。

売買・交換は取引価額、貸借は借賃を基準にするため、同じ計算式を使うことはできません。また、一方の依頼者から受け取れる額と、取引全体で受け取れる合計額を分けて考える必要があります。

試験対策

頻出数字は、売買・交換の「3%+6万円」、代理の「媒介の2倍」、貸借の「借賃1か月分」、居住用建物の「一方0.5か月分」、低廉な空家等の「800万円以下・30万円」です。数字だけを暗記せず、どの取引に使う数字かをセットで押さえます。

この章の見方
【この章の見方】

①売買・交換/貸借 → ②媒介/代理 → ③税抜価額 → ④特例 → ⑤一方の上限と総枠、の順に確認します。

2報酬額の掲示と基本ルール

宅建業者は、事務所ごとに報酬額を掲示しなければなりません。依頼者や取引相手が、どの程度の報酬を負担する可能性があるのかを、あらかじめ確認できるようにするためです。

報酬額表は事務所に備えるものです。案内所等では標識の掲示が必要になる場合がありますが、標識と報酬額表を混同しないようにします。

宅建業者は、定められた上限を超える報酬を受け取れません。さらに、実際に受領していなくても、不当に高額な報酬を要求すること自体が禁止されています。

報酬額の掲示と上限
掲示 事務所ごとに掲示 見やすい場所へ 目的 上限を明らかにする 依頼者・相手方を保護 制限 限度額超過は不可 受領できない 要求 不当に高額な要求も禁止 受け取る前でも注意 掲示・上限・要求を確認
【要点整理】
確認項目 ルール
掲示場所 事務所ごとに、見やすい場所へ報酬額表を掲示
案内所等 標識の掲示と区別。報酬額表は事務所を中心に確認
受領の上限 国土交通大臣が定める限度額を超えて受領不可
要求の禁止 受け取る前でも、不当に高額な報酬の要求は禁止

3売買・交換の媒介報酬

売買・交換の媒介報酬は、取引価額を区分し、それぞれの部分に所定の割合を掛けて計算します。計算結果は、依頼者の一方から受け取れる報酬の上限です。

取引価額が400万円を超える場合は、区分計算をまとめた速算式「価額×3%+6万円」を利用できます。200万円超400万円以下では「価額×4%+2万円」、200万円以下では「価額×5%」です。

交換では、交換する宅地・建物の評価額が異なるときは、高い方の価額を基準にして計算します。

売買・交換の媒介報酬(税抜)
200万以下 価額×5% 低額区分 200万超 価額×4%+2万円 400万円以下 400万超 価額×3%+6万円 頻出の速算式 交換 高い方の価額 売買と同じ計算 400万円超は3%+6万円
【要点整理】
取引価額 速算式 確認ポイント
200万円以下 価額×5% 依頼者の一方から受け取れる上限
200万円超400万円以下 価額×4%+2万円 区分計算をまとめた式
400万円超 価額×3%+6万円 試験で最もよく使う式
交換 高い方の評価額を基準 価額差がある場合に注意
計算の入口
【計算の入口】

売買代金に建物の消費税が含まれているときは、先に税抜価額へ直してから報酬を計算します。

4売買・交換の代理報酬

売買・交換の代理では、代理の依頼者から、媒介報酬限度額の2倍まで受け取ることができます。

ただし、1つの取引について宅建業者が受け取れる報酬の合計にも上限があります。一方から代理、他方から媒介の依頼を受けても、「2倍+1倍」で3倍まで受け取れるわけではありません。

複数の宅建業者が取引に関与するときも、業者ごとに上限が増えるのではなく、取引全体の総額で限度を確認します。

代理報酬と取引全体の総枠
媒介 一方から1倍まで 媒介報酬限度額 代理 依頼者から2倍まで 売買・交換で確認 混在 代理+媒介でも総枠2倍 3倍にはならない 複数 複数業者でも総枠確認 合計上限は増えない 代理でも取引全体の総枠を見る
【要点整理】
場面 上限の考え方
媒介 依頼者の一方から媒介報酬限度額まで
代理 代理の依頼者から媒介報酬限度額の2倍まで
一方代理・一方媒介 取引全体では媒介報酬限度額の2倍まで
複数業者が関与 全業者の合計で取引全体の上限を超えない
注意
【注意】

「代理は2倍」は、代理人が各当事者から2倍ずつ受け取れるという意味ではありません。必ず取引全体の合計額を確認します。

5消費税の扱い

報酬計算では、取引価額に含まれる消費税と、宅建業者の報酬に上乗せする税相当額を分けて考えます。

建物の売買代金に消費税が含まれている場合は、建物部分の消費税を除いた価額を計算の基礎にします。土地の譲渡代金は非課税です。土地付き建物では、土地と建物を区分して処理します。

計算した報酬額には、宅建業者が課税事業者なら10%を、免税事業者なら4%を加えることができます。免税事業者の4%は、消費税そのものではなく、仕入れに含まれる税負担等を考慮した上乗せです。

消費税処理の2段階
基礎価額 建物消費税を除く 税込建物価格に注意 土地 土地代金は非課税 建物と分ける 報酬税 課税事業者は+10% 報酬に上乗せ 免税 免税事業者は+4% 消費税そのものではない 基礎価額と報酬税を分ける
【要点整理】
段階 処理
取引価額を決める 建物代金に含まれる消費税を除き、税抜価額を用いる
土地の扱い 土地代金は非課税。土地と建物を分ける
課税事業者の報酬 計算した報酬額に10%を上乗せ
免税事業者の報酬 計算した報酬額に4%を上乗せ

6貸借の媒介・代理報酬

貸借の報酬は、売買・交換の速算式ではなく、借賃を基準に計算します。媒介・代理を問わず、原則として1つの貸借取引で受け取れる報酬の合計は、借賃1か月分以内です。

居住用建物の貸借を媒介する場合、依頼者の一方から受け取れる報酬は、原則として借賃0.5か月分までです。ただし、媒介の依頼を受ける時点で承諾を得ていれば、一方から0.5か月分を超えて受け取ることができます。

承諾がある場合でも、貸主と借主から受け取る報酬の合計は、原則として借賃1か月分以内です。居住用建物以外の貸借では、一方から1か月分を受け取ることもできますが、取引全体の総枠は変わりません。

貸借報酬の基本ルール(税抜)
総枠 借賃1か月分以内 1取引全体の合計 居住用 一方0.5か月分まで 承諾があれば超過可 居住用以外 一方1か月分も可 総枠は1か月分 代理 原則1か月分以内 売買代理の2倍と区別 貸借は借賃1か月分を基準にする
【要点整理】
場面 一方からの上限 取引全体の合計
居住用建物の媒介 原則0.5か月分 原則1か月分以内
居住用建物・承諾あり 0.5か月分超も可能 原則1か月分以内
居住用以外の貸借 1か月分となる場合あり 原則1か月分以内
貸借の代理 依頼関係に応じて配分 原則1か月分以内
承諾の時期
【承諾の時期】

居住用建物で一方から0.5か月分を超えて受け取るには、媒介の依頼を受ける際の承諾が必要です。

7権利金がある場合

居住用建物以外の貸借で権利金の授受があるときは、その権利金を売買代金とみなして報酬額を計算できる場合があります。

ここでいう権利金は、返還されない性質の金銭です。契約終了時に返還される敷金や保証金とは区別します。

この計算方法は、店舗・事務所・宅地などの貸借で問題になります。居住用建物の貸借には適用しません。

権利金による計算
対象 居住用建物以外 宅地・事業用建物など 金銭 返還されない権利金 敷金と区別 計算 売買代金とみなす 売買の式を使える 除外 居住用建物は不可 貸借原則で確認 居住用以外・権利金で判断
【要点整理】
確認項目 内容
対象 居住用建物以外の貸借
権利金 返還されない性質の金銭
計算 権利金を売買代金とみなし、売買・交換の式を用いる
比較 通常の借賃1か月分による上限と比べて確認
対象外 居住用建物の貸借

8低廉な空家等の特例

低廉な空家等の特例は、税抜の取引価額が800万円以下の宅地・建物について、売買・交換の媒介報酬を拡張する制度です。交換の場合は、高い方の評価額で800万円以下かを判断します。

名称に「空家等」とありますが、実際に空いているかどうかは問いません。対象になるかどうかは、使用状態ではなく価額で判断します。

媒介では、通常の計算額を超えて、依頼者の一方から30万円まで受け取ることができます。課税事業者なら税込33万円までです。売主側と買主側のいずれについても、依頼者ごとに上限を確認します。

通常の上限を超える報酬を受け取る場合は、媒介契約を結ぶときに、あらかじめ依頼者へ説明し、合意を得る必要があります。代理では媒介の2倍として60万円まで、課税事業者なら税込66万円までとなります。

低廉な空家等の特例
対象 800万円以下 税抜価格で確認 状態 使用状態は問わない 空家かどうかではない 媒介 一方から30万円まで 課税なら税込33万円 代理 60万円まで 課税なら税込66万円 条件 説明と合意 通常上限超過時に確認 800万円以下・30万円・状態不問
【要点整理】
確認項目 内容
対象価額 税抜800万円以下。交換では高い方の評価額
使用状態 問わない。空家であることは要件ではない
媒介の上限 依頼者の一方から30万円まで(課税事業者は税込33万円)
代理の上限 60万円まで(課税事業者は税込66万円)

9長期の空家等の貸借に関する特例

長期の空家等の貸借特例は、長期間使用されていない宅地・建物などについて、貸主から受け取れる報酬の上限を広げる制度です。

対象は、現に長期間にわたって居住・事業などに使われていないもの、または今後も使われる見込みがないものです。少なくとも1年を超えるような長期間の空き家・空き室が典型例です。

貸主から受け取る報酬は、税抜で借賃2か月分まで、課税事業者なら税込2.2か月分まで広げることができます。一方、借主から受け取る報酬には通常の制限が残ります。

居住用建物の場合、借主の承諾がなければ、借主から受け取れる額は税込0.55か月分までです。また、貸主と借主から受け取る報酬の合計も、税込2.2か月分以内でなければなりません。

長期の空家等の貸借特例
対象 長期の空家等 長期間未使用等 目安 1年超の不使用など 空き家・空き室 受領先 貸主からの報酬 上乗せは貸主側 上限 借賃2か月分まで 合計も2.2か月分以内 合計 貸主・借主合計も同枠 総額を確認 長期空家等は貸主側特例
【要点整理】
確認項目 内容
対象 長期間未使用、または将来も使用見込みがない宅地・建物
受領先 特例による上乗せは貸主側の報酬
貸主側上限 税抜2か月分、課税事業者は税込2.2か月分
借主側 通常の貸借報酬制限が残る
合計額 貸主・借主からの合計も税込2.2か月分以内
空家等の2特例
【空家等の2特例】

売買・交換は「800万円以下・使用状態不問」、貸借は「長期間未使用等・貸主側の報酬拡張」です。

10報酬以外の費用請求

宅建業者は、報酬の上限を避けるために、調査費・広告費・交通費などへ名目を変えて金銭を請求できるわけではありません。実質が通常の媒介・代理業務の対価であれば、報酬制限の対象です。

一方、依頼者から特別に頼まれた広告や遠隔地での特別調査など、通常業務を超える実費は別途請求できる場合があります。「特別な依頼」「実費の発生」「通常業務を超えること」の3点を確認します。

報酬と別途費用の区別
原則 名目変更で上乗せ不可 実質報酬は制限対象 広告費 特別依頼が必要 通常広告は報酬内 調査費 遠隔地等の実費 通常業務超過を確認 判断 依頼・実費・通常外 3点で確認 名目ではなく実質で判断
【要点整理】
費用 取扱い
通常の営業・広告費 原則として報酬に含まれる
特別依頼の広告・調査費 通常業務を超える実費なら別途請求できる場合がある
名目だけを変えた金銭 実質が報酬なら上限規制を受ける

11不当に高額な報酬要求の禁止

報酬の制限は、実際に受け取った金額だけを対象とするものではありません。宅建業者は、限度額を超える報酬や、不当に高い報酬を要求することもできません。

したがって、「請求しただけで、まだ受け取っていないから違反ではない」という考え方は誤りです。受領前の要求段階から規制されます。

謝礼・手数料・調査費などの名称を付けても、実質が報酬であれば同じです。違反した場合は、監督処分や罰則の対象となることがあります。

受領禁止と要求禁止
受領 限度額超過は不可 受け取れない 要求 不当に高額な要求禁止 受領前でも問題 名目 謝礼・調査費等 実質を確認 処分 違反は監督処分等へ 軽く扱わない 受け取る前の要求も確認
【要点整理】
行為 結論
限度額を超える報酬の受領 禁止
不当に高額な報酬の要求 受領していなくても禁止
別名目での上乗せ 実質が報酬なら禁止
違反した場合 監督処分・罰則の対象を確認

12媒介契約書・37条書面との関係

宅建業者の報酬については、媒介契約書や代理契約で、依頼者との合意内容を明らかにします。報酬額だけでなく、支払時期や支払方法も確認できるようにします。

売買・交換の媒介契約書には、報酬に関する事項を記載します。低廉な空家等の特例によって通常の上限を超える額を受け取る場合は、契約締結時の説明・合意と、書面上の明確化が重要です。

37条書面は、売買・貸借の当事者間で成立した契約内容を明らかにする書面です。宅建業者と依頼者との報酬合意は、37条書面ではなく、媒介契約書や代理契約を中心に確認します。

報酬と書面の関係
媒介契約 報酬事項を記載 依頼者との約束 37条 契約内容として確認 額・時期・方法 上限 報酬制限を守る 書けば自由ではない 比較 35条とは目的が違う 契約前説明と区別 上限を守って書面にも明記
【要点整理】
書面 役割
媒介契約書・代理契約 宅建業者と依頼者との報酬合意を明確にする
37条書面 売買・貸借などの契約当事者間の合意内容を明確にする
35条書面 契約前に重要事項を説明するための書面
共通の注意 書面に合意があっても、法定の報酬上限を超えられない

13横断比較

報酬制限は、取引ごとの基準と特例を横断して比べると整理しやすくなります。売買・交換は価額、貸借は借賃が計算の基準です。

また、「低廉な空家等」と「長期の空家等」は、名称が似ていますが、対象となる取引、要件、受領できる相手、上限額が異なります。

報酬制限の横断比較
売買等 価額基準 3%+6万円等 貸借 借賃基準 原則1か月分 低廉空家 800万円以下 媒介30万円 長期空家 長期未使用等 貸主側2か月分 共通 説明・合意を確認 上限超過に注意 価額・借賃・空家特例を比較
【要点整理】
区分 基準・上限 重要ポイント
売買・交換の媒介 価額基準。400万円超は3%+6万円 一方の依頼者からの上限
売買・交換の代理 媒介限度額の2倍 取引全体の総枠も2倍まで
貸借 原則として借賃1か月分以内 居住用は一方0.5か月分が原則
権利金 居住用以外で売買代金とみなす計算 返還されない金銭
低廉な空家等 税抜800万円以下・媒介30万円 使用状態は問わない
長期の空家等 貸主側は税抜2か月分まで 合計税込2.2か月分以内

14ひっかけ対策

報酬制限の問題では、売買と貸借、媒介と代理、税込と税抜、通常計算と特例が入れ替えられます。問題文の数字を見る前に、取引の分類を確定させます。

売買・交換の「3%+6万円」を貸借へ使ったり、売買代理の「2倍」を貸借代理へそのまま当てはめたりしないようにします。

空家等の特例では、低廉な空家等は800万円以下で使用状態を問わず、長期の空家等の貸借特例は長期間使われていないことなどが要件です。

ひっかけを避ける確認順序
分類 売買か貸借か 計算式を入れ替えない 立場 媒介か代理か 代理2倍は売買等で確認 税込・税抜を分ける 建物消費税に注意 空家 低廉と長期を区別 800万円・長期未使用 総枠 複数業者でも上限あり 合計額を確認 分類・税・特例・総枠を確認
【要点整理】
確認順 チェック内容
1 取引 売買・交換か、貸借か
2 立場 媒介か、代理か
3 基礎額 税抜価額か、借賃か
4 特例 権利金、低廉な空家等、長期の空家等
5 限度額 一方からの上限と、取引全体の総枠
6 書面・合意 特例の説明・合意や媒介契約書の記載

最後に押さえるポイント

  • 宅建業者は、国土交通大臣が定める限度額を超える報酬を受け取れず、報酬額表は事務所ごとに掲示します。
  • 売買・交換の媒介報酬は取引価額を基準とし、400万円超では「価額×3%+6万円」を使います。交換では高い方の価額を基準にします。
  • 売買・交換の代理は媒介報酬限度額の2倍までですが、取引全体の総枠も確認します。
  • 建物代金に含まれる消費税は基礎価額から除き、報酬には課税事業者10%、免税事業者4%を上乗せできます。
  • 貸借の報酬合計は原則として借賃1か月分以内で、居住用建物の媒介は一方0.5か月分が原則です。
  • 居住用建物以外で権利金がある場合は、権利金を売買代金とみなす計算を確認します。
  • 低廉な空家等は税抜800万円以下で使用状態を問わず、媒介は一方30万円までです。
  • 低廉な空家等で通常上限を超える報酬を受け取る場合は、媒介契約締結時の説明・合意が必要です。
  • 長期の空家等の貸借特例は貸主側の報酬を広げる制度で、貸主・借主からの合計は税込2.2か月分以内です。
  • 通常業務の費用は名目を変えて別途請求できず、実質が報酬なら上限規制を受けます。
  • 不当に高額な報酬は、受領だけでなく要求することも禁止されます。
  • 報酬合意は媒介契約書・代理契約で確認し、35条書面・37条書面との役割を区別します。