3要素と決議要件で整理
2026年(令和8年)10月本試験対応|令和8年4月1日施行改正を反映
1本章の学習ポイント
区分所有法は、分譲マンションのように、1棟の建物を複数人が区分して所有する場合のルールを定めた法律です。専有部分だけでなく、廊下や階段などの共用部分、管理規約、集会での決議など、建物全体を管理するための仕組みも定めています。
学習の全体像
この章では、区分所有法の基本、専有部分・共用部分・敷地利用権、管理組合・管理者・規約、集会と決議要件、義務違反者への措置、建物の復旧・建替え・再生、所在等不明者や管理不全への対応までを順に整理します。
試験対策
試験では、区分所有者と占有者、法定共用部分と規約共用部分を正しく区別できるかが問われます。また、決議要件は「区分所有者の人数」と「議決権」の両方を確認し、過半数・4分の3・3分の2・5分の4を対象となる事項とセットで覚えることが重要です。令和8年4月施行の改正では、出席者を基準とする決議、所在等不明者の扱い、建替え以外の再生手法にも注意します。
【この章の見方】
まず「専有・共用・敷地」の3要素を分け、その後に「誰が、どの割合で決めるのか」を確認します。
2区分所有法の基本
区分所有法の正式名称は「建物の区分所有等に関する法律」です。1棟の建物の中に、構造上区分され、住居・店舗・事務所などとして独立して利用できる部分があるとき、その部分を個別の所有権の対象にできます。
マンションの一室など、専有部分を所有する人を区分所有者といいます。これに対し、賃借人のように専有部分を実際に使用していても、その部分を所有していない人は占有者です。区分所有者と占有者では、集会での議決権などに違いがあります。
共用部分は複数人の共有になりますが、管理方法を民法の共有ルールだけで判断するわけではありません。区分所有建物では、管理組合、規約、集会決議など、区分所有法に定められた特別な仕組みが優先します。
令和8年改正では、マンションの管理や再生を進めやすくする仕組みが整えられました。宅建では、細かな実務よりも、区分所有者・占有者・管理組合の立場を分けて理解することが大切です。
| 項目 | 確認ポイント |
|---|---|
| 区分所有法 | 1棟の建物を複数人が区分して所有する場合の権利関係と管理方法を定める法律 |
| 区分所有者 | 専有部分を所有する人。借りて使用する占有者とは区別する |
| 占有者 | 賃借人など、専有部分を実際に使用する人。議決権はないが、共同生活上のルールには関係する |
| 民法上の共有との違い | 共用部分は共有でも、管理組合・規約・集会決議という特別ルールで管理する |
| 区分所有者の立場 | 専有部分だけでなく、建物全体の管理にも関わる |
【重要ポイント】
共用部分が共有であっても、管理方法は民法だけでなく区分所有法のルールで判断します。
3専有部分・共用部分・敷地利用権
区分所有建物の権利関係は、専有部分、共用部分、敷地利用権の3つに分けて考えます。専有部分は、101号室のように、構造上区分され、住居・店舗・事務所などとして独立して利用できる部分です。
共用部分には、法律上当然に共用部分となる法定共用部分と、本来は専有部分になり得る部分を規約によって共用部分とした規約共用部分があります。廊下・階段・エレベーターなどは法定共用部分、管理人室や集会室などは規約共用部分の例です。
法定共用部分は登記できません。一方、規約共用部分を第三者に対抗するには登記が必要です。どちらの共用部分かによって登記の扱いが異なるため、必ず区別しましょう。
共用部分の持分は、原則として各区分所有者が所有する専有部分の床面積の割合によって決まります。また、共用部分の持分と敷地利用権は、原則として専有部分から切り離して処分できません。部屋、敷地利用権、共用部分の持分は、基本的に一緒に動くと考えます。
| 項目 | 確認ポイント |
|---|---|
| 専有部分 | 構造上区分され、住居・店舗・事務所などとして独立して利用できる部分 |
| 法定共用部分 | 廊下・階段・エレベーターなど、構造上当然に共同使用される部分。登記できない |
| 規約共用部分 | 管理人室・集会室など、本来は専有部分になり得る部分を規約で共用部分としたもの。第三者対抗には登記が必要 |
| 共用部分の持分 | 原則として専有部分の床面積割合による。専有部分と分離して処分できない |
| 敷地利用権 | 専有部分を所有するために敷地を利用する権利。原則として専有部分と分離処分できない |
【注意ポイント】
法定共用部分は登記できません。規約共用部分は、第三者に対抗するために登記が必要です。
4管理組合・管理者・規約
区分所有者は、全員で管理組合を構成します。管理組合は任意で加入する団体ではなく、専有部分を所有すると当然に構成員になります。
管理者は、共用部分などの保存、集会決議の実行、規約で定められた行為などを担当します。管理者は区分所有者に限られず、管理会社など外部の者が選ばれることもあります。
規約は、マンション内の基本ルールです。規約の効力は、区分所有者から専有部分を取得した特定承継人にも及びます。規約の設定・変更・廃止は、集会における特別決議の対象です。
管理者は、毎年1回以上集会を招集し、毎年1回、一定の時期に集会で事務報告をします。また、区分所有者の5分の1以上で、議決権の5分の1以上を有する者は、管理者に集会の招集を請求できます。この定数は規約で減らすことができます。
占有者には議決権がありません。ただし、会議の目的となる事項について利害関係があるときは、集会で意見を述べることができます。国外にいる区分所有者との連絡や管理を円滑にするため、国内管理人の仕組みも設けられています。
| 項目 | 確認ポイント |
|---|---|
| 管理組合 | 区分所有者全員で構成する。任意加入ではない |
| 管理者 | 共用部分等の保存、集会決議の実行、規約で定めた行為などを行う。区分所有者でなくてもよい |
| 規約 | マンション内の基本ルール。特定承継人にも効力が及ぶ |
| 集会の招集 | 管理者は毎年1回以上、集会を招集する |
| 事務報告 | 管理者は毎年1回、一定の時期に集会で事務報告をする |
| 招集請求 | 区分所有者の5分の1以上かつ議決権の5分の1以上を有する者が請求できる。定数は規約で減らせる |
| 占有者の意見 | 目的事項について利害関係があるときは、集会で意見を述べられる。議決権はない |
| 国内管理人 | 国外にいる区分所有者との連絡・管理を円滑にするための仕組み |
【注意ポイント】
管理者は区分所有者に限られません。管理会社など、外部の者が管理者になる場合もあります。
5集会と決議要件
区分所有法では、集会で決める事項ごとに必要な割合が異なります。令和8年4月1日施行の改正後、通常の議事は、原則として出席した区分所有者の過半数かつ、その出席者の議決権の過半数で決します。
規約の設定・変更・廃止や、共用部分の重大な変更などの特別決議では、まず区分所有者と議決権のそれぞれについて、全体の過半数が出席していることが必要です。そのうえで、出席した区分所有者およびその議決権の各4分の3以上で決します。
一部の区分所有者の権利に特別の影響を及ぼす場合は、その区分所有者の承諾も確認します。共用部分の変更でも、形状や効用の著しい変更を伴わない軽微な変更は普通決議です。
建物価格の2分の1を超える滅失からの復旧には、定足数を満たした集会で、出席した区分所有者および議決権の各3分の2以上が必要です。建替え決議は、原則として区分所有者および議決権の各5分の4以上ですが、耐震性不足など一定の客観的事由がある場合は各4分の3以上に緩和されます。
決議では、区分所有者の人数だけ、または議決権だけを確認しても足りません。両方の要件を満たす必要があります。代理人、書面、電磁的方法による議決権行使がある場合も、どの人数と議決権を母数にして割合を判断するのかを確認しましょう。
所在等不明区分所有者がいる場合、裁判所の決定により、一定の決議についてその者を母数から除外できることがあります。ただし、管理組合が独自の判断で除外することはできません。
| 決議・事項 | 必要な要件 |
|---|---|
| 普通決議 | 出席した区分所有者およびその議決権の各過半数。管理者の選任・解任、管理行為、軽微変更など |
| 特別決議の定足数 | 区分所有者および議決権の各過半数の出席 |
| 規約の設定・変更・廃止 | 定足数を満たした集会で、出席した区分所有者および議決権の各4分の3以上 |
| 共用部分の重大変更 | 定足数を満たした集会で、出席した区分所有者および議決権の各4分の3以上 |
| 特別の影響 | 一部の区分所有者の権利に特別の影響を及ぼすときは、その者の承諾も必要 |
| 大規模滅失の復旧 | 建物価格の2分の1を超える滅失。定足数を満たした集会で、出席者および議決権の各3分の2以上 |
| 建替え決議 | 原則として区分所有者および議決権の各5分の4以上。一定の客観的事由がある場合は各4分の3以上 |
| 所在等不明者の除外 | 裁判所の決定により、一定の決議で母数から除外できる。管理組合だけでは除外できない |
【最重要】
決議要件は「区分所有者数」と「議決権」の両方で判断します。「または」ではなく「および」である点に注意しましょう。
6義務違反者への措置
区分所有建物では、1人の迷惑行為が建物全体の共同生活に影響します。区分所有者や占有者が共同の利益に反する行為をした場合には、その程度に応じて、行為停止、専有部分の使用禁止、区分所有権等の競売請求などの措置が用意されています。
行為停止等の請求は、共同の利益に反する行為をやめさせ、その発生を予防し、または生じた結果を除去するための基本的な措置です。
違反が重く、共同生活を維持することが困難な場合には、専有部分の使用禁止や、区分所有権および敷地利用権の競売を求めることがあります。賃借人などの占有者に対しては、契約解除と専有部分の引渡しを請求する仕組みがあります。
使用禁止、競売請求、占有者への契約解除・引渡請求には、区分所有者および議決権の各4分の3以上の特別決議が必要です。また、あらかじめ対象者に弁明の機会を与えなければなりません。
これらの重い措置は、集会で決議しただけで直ちに完了するものではありません。訴えを提起し、裁判上の請求として進めます。区分所有者本人に対する措置か、占有者に対する措置かを分けて整理しましょう。
| 措置 | 確認ポイント |
|---|---|
| 行為停止等 | 共同の利益に反する行為の停止・予防・原状回復を請求する |
| 使用禁止 | 専有部分の使用禁止を請求する。区分所有者および議決権の各4分の3以上が必要 |
| 競売請求 | 区分所有権および敷地利用権の競売を請求する。各4分の3以上の特別決議が必要 |
| 占有者への請求 | 賃借人などに対し、契約解除と専有部分の引渡しを請求する。各4分の3以上が必要 |
| 弁明の機会 | 使用禁止・競売請求・占有者への引渡請求では、あらかじめ与える |
| 訴えによる請求 | 重い措置は集会決議だけでは完了せず、訴えによって請求する |
【判断の順序】
まず行為停止等を確認し、共同生活の維持が困難なほど重大な場合に、使用禁止・競売・占有者への引渡しを検討します。
7復旧・建替え・再生
建物が壊れた場合は、壊れた部分を直す復旧と、建物を取り壊して新しく建てる建替えを区別します。復旧では、滅失した部分が建物価格の2分の1以下か、2分の1を超えるかが重要です。
建物価格の2分の1以下の滅失は小規模滅失として扱い、各区分所有者による復旧や集会決議との関係を確認します。2分の1を超える大規模滅失を復旧するには、定足数を満たした集会で、出席した区分所有者および議決権の各3分の2以上が必要です。
建替え決議は、原則として区分所有者および議決権の各5分の4以上で行います。ただし、耐震性不足、火災に対する安全性不足、外壁が剥落するおそれ、配管の劣化による衛生上の有害のおそれ、バリアフリー基準への不適合など、一定の客観的事由がある場合は各4分の3以上に緩和されます。
建替え決議が成立した後は、建替えに参加するかどうかを確認します。参加しない区分所有者に対しては、区分所有権や敷地利用権の売渡しを請求できる場合があります。
令和8年改正では、建替え以外の再生手法も整えられました。建物を大規模に更新する建物更新、建物と敷地を一括して売却する方法、建物を取り壊す方法、建物を取り壊したうえで敷地を売却する方法などを、復旧や建替えと分けて覚えます。
| 項目 | 確認ポイント |
|---|---|
| 小規模滅失 | 建物価格の2分の1以下の滅失。各区分所有者による復旧や集会決議との関係を確認 |
| 大規模滅失 | 建物価格の2分の1を超える滅失。復旧は定足数を満たした集会で、出席者および議決権の各3分の2以上 |
| 建替え決議 | 建物を取り壊し、新しい建物を建てる決議。原則として各5分の4以上 |
| 建替え要件の緩和 | 耐震性不足など一定の客観的事由がある場合は、各4分の3以上 |
| 売渡請求 | 建替え決議後、参加しない区分所有者に対して行う |
| 建物更新 | 建物を大規模に更新する再生手法 |
| 建物・敷地売却等 | 建物と敷地の一括売却、建物取壊し、建物取壊し後の敷地売却など |
【注意ポイント】
壊れた建物を直すのが復旧、取り壊して建て直すのが建替えです。建物更新や売却・取壊しは、別の再生手法として区別します。
8所在等不明者・管理不全への対応
区分所有者の所在などが分からないために決議が進まない場合、裁判所の決定により、一定の決議について所在等不明区分所有者を母数から除外できることがあります。
ただし、管理組合が独自の判断で不明者を除外することはできません。所在等不明者への対応は、必ず裁判所の手続を通じて行います。
専有部分または共用部分の管理が不適当な場合には、管理不全専有部分管理人や管理不全共用部分管理人を裁判所が選任し、管理を進める制度があります。
選任された管理人も、自由にすべての処分を行えるわけではありません。保存や通常の管理を超える処分をする場合には、裁判所の許可などが必要です。
| 項目 | 確認ポイント |
|---|---|
| 決議母数からの除外 | 裁判所の決定により、一定の決議で所在等不明区分所有者を母数から除外できる |
| 管理組合の独自判断 | 管理組合だけの判断で不明者を除外することはできない |
| 管理不全専有部分管理人 | 管理が不適当な専有部分について、裁判所が選任する管理人 |
| 管理不全共用部分管理人 | 管理が不適当な共用部分について、裁判所が選任する管理人 |
| 制度の区別 | 所在等不明は所有者の所在等が分からない場合、管理不全は管理が不適当な場合 |
| 管理人の権限 | 保存・管理を超える処分では、裁判所の許可などが必要 |
【重要ポイント】
所在等不明区分所有者を決議の母数から除外するには、裁判所の決定が必要です。
9横断比較
区分所有法は、用語と数字を横断して整理すると理解しやすくなります。まず、専有部分、法定共用部分、規約共用部分、敷地利用権を区別し、何が登記できるか、専有部分と分けて処分できるかを確認します。
次に、管理組合は区分所有者全員で構成されること、管理者は区分所有者以外でもよいこと、規約は特定承継人にも効力が及ぶことを押さえます。
決議要件は、普通決議の過半数、規約変更や重大変更の4分の3、大規模滅失の復旧の3分の2、建替えの5分の4を、対象となる事項とセットで覚えます。いずれも、区分所有者数と議決権の両方を見ることが基本です。
最後に、義務違反者への措置は行為停止から使用禁止・競売へと段階的に重くなり、建物の再生では復旧・建替え・建物更新・売却・取壊しを分けて整理します。所在等不明者や管理不全への対応では、裁判所の関与が必要である点が共通します。
| 分野 | 確認ポイント |
|---|---|
| 権利関係 | 専有部分、法定共用部分、規約共用部分、敷地利用権を区別する |
| 管理の仕組み | 管理組合は全員で構成。管理者は区分所有者でなくてもよい。規約は特定承継人にも効力が及ぶ |
| 決議要件 | 普通決議は出席者の各過半数、規約・重大変更は各4分の3、復旧は各3分の2、建替えは原則各5分の4 |
| 義務違反者 | 行為停止、使用禁止、競売請求、占有者への引渡請求を段階で整理する |
| 再生手法 | 復旧、建替え、建物更新、建物・敷地売却、取壊しなどを区別する |
| 改正論点 | 出席者基準、所在等不明者の母数除外、建替え要件の緩和、新しい再生手法を確認する |
最後に押さえるポイント
- 区分所有法は、分譲マンションなどの権利関係と管理方法を定める特別法です。
- 区分所有者は専有部分を所有する人、占有者は賃借人など実際に使用する人です。
- 専有部分、共用部分、敷地利用権の3つを分けて考えます。
- 法定共用部分は登記できず、規約共用部分は第三者に対抗するために登記が必要です。
- 共用部分の持分は原則として専有部分の床面積割合によって決まり、敷地利用権とともに専有部分から分離して処分できません。
- 管理組合は区分所有者全員で構成され、管理者は区分所有者以外でも構いません。
- 管理者は毎年1回以上集会を招集し、毎年1回、一定の時期に集会で事務報告をします。
- 区分所有者の5分の1以上かつ議決権の5分の1以上を有する者は、集会招集を請求できます。
- 占有者には議決権はありませんが、目的事項について利害関係があるときは意見を述べられます。
- 普通決議は、出席した区分所有者およびその議決権の各過半数です。
- 規約変更や共用部分の重大変更は、定足数を満たしたうえで、出席者および議決権の各4分の3以上です。
- 大規模滅失の復旧は各3分の2以上、建替え決議は原則として各5分の4以上です。
- 耐震性不足など一定の客観的事由がある建替えでは、各4分の3以上に緩和されます。
- 建替え決議後は、参加しない区分所有者への売渡請求を確認します。
- 使用禁止・競売請求・占有者への引渡請求には、各4分の3以上の決議、弁明の機会、訴えによる請求が必要です。
- 復旧は壊れた建物を直すこと、建替えは取り壊して新しく建てることです。建物更新・売却・取壊しは別の再生手法です。
- 所在等不明区分所有者を決議母数から除外するには、裁判所の決定が必要です。
- 管理不全の管理人が保存・管理を超える処分をする場合は、裁判所の許可などを確認します。
- 区分所有法の決議要件は、区分所有者数と議決権をセットで判断します。